今回も健忘録的にMMSEの取り方のスライドを転記しておきます。
◯アルツハイマー型認知症(AD)
・最も多い認知症
・近時記憶障害、構成障害が初期にでる
・物盗られ妄想
・換語困難(呼称はできないが、指示はできる、語頭のヒントで思い出す)
・失語症状が前景にある場合もある(近時記憶障害が軽いからといってADを除外診断できない)
◯脳血管性認知症(VaD)
・脳の血管障害、脳梗塞や脳出血によって起こる
・損傷部位によって症状は多彩
・高血圧、糖尿病、心疾患などのリスクファクターがある場合もある
・注意障害等が出やすい
◯レビー小体型認知症(DLB)
・幻視
・誤認妄想
・パーキンソニズム
・注意、覚醒レベルの変動
・レム睡眠行動障害
◯前頭側頭葉変性症(FTLD)
・前頭側頭型認知症(FTD)
>我が道をいく行動、時刻表的生活、常同行動立ち去り行動、味覚の異常
・意味性認知症(SD)
>意味記憶障害
・進行性非流暢性失語(PNFA)
>アナルトリー、自発話減少、文法障害
◯各認知症の特徴
AD:記憶障害、見当識障害、構成障害
VaD:注意障害、抑制障害などの前頭葉機能障害、記憶障害は軽度
DLB:視覚認知障害、注意障害、記憶障害は軽度
FTLD:注意障害、抑制障害などの前頭葉機能障害 + 言語障害
◯基礎知識の確認
・病前の知能(教育歴)が低ければ、認知機能も低い
・注意が低下すれば、見かけ上、記憶も低下する
・認知機能のみによって診断はできない
◯MMSE
・時の見当識(5点)
・場所の見当識(5点)
・記銘(3点)
・シリアル7(5点)
・復唱(1点)
・3段階命令(3点)
・読字(1点)
◯見当識
・時の見当識
MMSE:年、月、日、季節、時間(5点)
・場所の見当識
MMSE:施設、階、市、県、地方(5点)
※見当識障害は、時→場所の順で進む。中
等度のADに見当識の障害がみられる
◯見当識のポイント
・季節の変わり目の場合は、季節の始まりか終わりかを尋ねる
・「ここは何階ですか?」→「今いる場所は、何階ですか?」
・「ここは何地方ですか?」→ヒント「関東地方とかいいますよね」「ここは日本の中では何地方といいますか?」
◯記銘
・3点の配点
・即時再生記憶
・入力した情報をそのまま再生する
・できない場合は6回まで繰り返す
・記銘後、想起までに必ず他の検査をはさむ(5分)
・難聴や注意障害があるかもみておく
◯遅延再生:想起
・3点の配点
・加点はしないが、カテゴリーヒントを採用する
・ADでは、最も早期に落ちる項目
◯遅延再生:想起 (補助再生)
ヒントなしで再生できない場合…
「ヒントを出します。3つのうちの1つは動物の名前です」
“うさぎではなかったね?”などと確信のない反応でも「そうです、うさぎでした」と確認して正答したものとみなす。
正答できない場合すぐにそのアイテムの再認に移る。
「では私が動物の名前を3つ言います。さっきの動物はどれだったか、思い出して当ててみてください」そして「ねずみ、うさぎ、ひつじ」と選択肢を提示する。
自由再生できなかった単語が複数あった場合には、1単語ずつ、この補助再生と再認再生を繰り返す。
◯シリアル7(計算)
・5点の配点
・注意と計算の検査
・注意能力が反映される点に注意
・入力した情報に操作を加えて再生する
・ADでは、中程度の時期に落ちてくる
・93-7は?とは、たずねない(間違えた時点で打ち切り)
◯言語検査(失語)
言語(失語)を評価する検査:
聴く:3段階命令(3点)
話す:復唱(1点)、命名(2点)
読む:読字(1点)
書く:書字(1点)
ADは、中程度の時期に書字が落ちる
◯3段階命令
・一括教示を行う
・命令を言い終わってから、紙を渡す(言い終わる前に、行動を取ろうとする場合は制止
・注意、ワーキングメモリ、遂行機能等が関係
・言語指示に従えるか(理解障害)をみる
◯復唱・命名
・復唱
・復唱障害をみる
◯命名(呼称)
・喚語困難をみる
・MMSEの物品は使用頻度が高いため、せんす等の低頻度語による補助検査も有効
◯読字・書字
・読字
「はい、目を閉じなさいですね」「あ~、そうね」等を言うが、動作を取らない場合は失点
◯書字
・最も拒否されやすい
・ヒント「今日の天気のことを書いてください」
・先に、「ダブル・ペンタゴン」を書いてもらうと書いてもらいやすい
・文章を書いてもらう前に、自分の名前を書いてもらうことも手助けになる
◯構成障害
・ダブル・ペンタゴン(1点)
・ADでは、中期に構成障害がみられる
・はと、逆さキツネの模倣を補助的に用いる場合もある
・できれば、立方体模写も行う
・ダブル・ペンタゴン
5角形で、2点で交差していれば正答。わかりにくい場合は、角を教えてもらう
・立方体 (Necker Cube)
「これは何の形ですか?」ときく
教育歴が低いと、模写できない場合がある
錯視図形であり、構成障害をより鋭敏に調べることができる
参考:FAB(前頭葉機能検査)の取り方