PTSD、解離、発達障害

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 トラウマと解離の関係について詳しく解説したものがないため、ここで少し解説したいと思います。

そもそも解離ってなに?

まず、この段階で、かなり難しいと思います。混乱のもとになるのは、解離症と解離という症状は違うものだということです。

解離症とは、DSM-5においては解離症群と呼ばれる疾患の中心にある症状です。非常に簡単に言えば、「解離性健忘」がある病気が解離症です。 解離性健忘とは日常生活の中で、意識はあるのに記憶が抜けている期間がある状態です。

例えば、気がついたら知らない場所に立っていた、リストカットをしていた、知らない間に知り合いが増えていた(他人から知り合いのように声をかけられる)などの現象によって気付かされます。

この解離性健忘の期間中は、意識があり、何らかの行動をとっているはずです。ただし、その期間中の考え方や行動は普通の状態の時とは違います。解離とは、記憶以外の感覚、自分が自分であるという感覚(同一性)、価値観(信念)なども途切れてしまいます。

俗に言う「解離が起こっている」という場合、この記憶以外にも、感覚、態度、信念が変容している場合も包括します。また、「解離が起こっている」という場合は、「現実感がなくなってぼんやりしている」という意味で使われることもあります。

この解離症ですが、かつてはヒステリーの中にありトラウマとは全く関係のない病気だと思われていました。

PTSDと解離症の関係

解離症という病気は長らく、謎な病気でした。しかし、PTSD、虐待という概念が精神医学の中に現れ始め、その周辺症状として解離が注目されたことにより、解離症について新たな視点が切り開かれました。

PTSDとは生死を関わるようなトラウマを経験した後に、苦しい記憶を思い出すフラッシュバックを中心とした症状が出る精神疾患です。このPTSDの一つの症状として、「ぼんやりしてトラウマ記憶が自分のもののように思えない」といった症状や、PTSDと解離性健忘、解離性同一症などを伴う場合が非常に多いことが分かってきました。つまり、解離症はトラウマによって出てくる症状なのではないか?という視点です。

さらに、PTSDの研究が進むに連れて、慢性化された(複数回の)トラウマにさらされた場合には、より解離の症状が強まることが分かってきたのです。この流れはDSM-5に部分的に採用され、PTSD解離型という診断項目が生まれました。さらに、ICD-11には複雑性PTSDと呼ばれる項目が登場します。このように、慢性化したトラウマではその症状の一つとして解離が出現することが分かってきました。

さらに単回性のPTSDと複雑性のPTSDの対比をしていく研究から、単回性のPTSDはフラッシュバックが中心であり、複雑性のPTSDは感情調整困難症、解離症が中核的な症状であることが分かってきました。感情調整困難症とは怒り・不安などが入り混じり、感情がコントロールできない症状です。

境界性パーソナリティと解離症

この感情調整困難症ですが、境界性パーソナリティ障害の研究でも出てくる言葉になります。境界性パーソナリティ障害がどんな病気であるかは、色々な研究がありますが、段々とその中心的な症状が怒り・不安などの感情調整困難症であり、そのために見捨てられ不安などを中心とした対人関係の問題が出てくることが分かってきました。

さらに、境界性パーソナリティ障害の診断基準の一つに解離症状というものがありました。つまり、境界性パーソナリティ障害の症状として解離があるというのはよく知られていたのです。さらに、PTSD、とりわけ複雑性のPTSDと境界性パーソナリティ障害の合併率が高い事もわかってきました。そのため、現在では、複雑なトラウマの結果、解離症も境界性パーソナリティ障害も発症していると考えたほうが自然なのではないか?という流れになってきています。

発達障害とトラウマ

ここで、突然ですが発達障害とトラウマの関係も出てきます。従来から虐待後の後遺症を抱える反応性愛着障害の人たちとADHD、自閉スペクトラム症といった発達障害の人たちは鑑別が難しいことが知られていました。

その理由は、両者が非常に行動様式が似ているためです。虐待による後遺症に苦しむ人は多動、不注意、共感性にかけるなどの行動様式が見られることがあります。

また、発達障害を持って生まれていると、親も発達障害である可能性も高くなり、不適切な養育、虐待を受けるリスクも高くなってしまいます。また、発達障害を持って生まれたことで社会的な場面でトラウマを持ちやすく、なおかつ記憶がトラウマ化しやすい特徴もあります。

トラウマ関連の病気を統合する

このように複雑性PTSD、解離症、境界性パーソナリティ障害とは相互に重複しあい、トラウマの様々な側面を切り取っているに過ぎないという中、「発達性トラウマ障害」という概念が出てきました。

発達性トラウマ障害を簡単に説明すると、「複雑なトラウマを持ち、解離、感情調整困難症をもち注意に関する症状を持つ」という状態です。発達性トラウマ障害の「発達」とは、発達する中でのトラウマという意味で発達障害とは関係ありません。 しかし、現状では、発達障害との鑑別は困難であり、かつ合併することも多いのです。

そのため、『診断名:ADHD、自閉スペクトラム症、境界性パーソナリティ障害、PTSD、解離症』という状態にある方がとても多いのです。

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