珍しく、認知症の話変性疾患の失語は、言葉のでにくさを主訴としてやってくる。
しかし、その背景疾患は様々で、経過も様々だ。
経過を予測するには適切な診断が必要になる。
失語は、基本的に脳を横から見て、前の方(ブローカー)が障害されると非流暢、後ろの方(ウェルニッケ)がやられると流暢の失語になる。
そして、ブローカー野とウェルニッケ野を弓状束という神経線維が繋いでいて、復唱という現象が成り立つ。
失語症を評価する際の、最低限のやり方は、
呼称:物品の名前をあげる
復唱:自分が言った言葉を繰り返してもらう
聴理解:簡単な命令通りの動作をしてもらう
自由会話
でだいたい、分かる。
これって、MMSEの後半の評価項目なのよね。実は。
STさんは、これらをもとに失語診断というものをして、リハビリを考える。
まずは、流暢か非流暢かを分け、次に復唱可能かそうでないかで分ける。
変性疾患(認知症)で、重要な症候は、
アナルトリー、喚語困難、復唱障害、理解障害、流暢性、語義失語(意味記憶障害)だ。
失語型としては、超皮質性感覚失語(TCSA)、超皮質性運動失語(TCSM)が多い。
超皮質性なんたら失語というのは、復唱ができるタイプの失語だ。
失語症状を呈する認知症としては、
アルツハイマー型認知症(AD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、
進行性非流暢性失語(PNFA)、Logopenic progressive aphasia(LPA)
意味性認知症(SD)
だ。
このうちの、PNFAとLPAは、症状による診断名であり、病理にもとづいているわけではない。
なので、PNFA、LPAはADである確率が高い。
以下の特徴は、本当にアバウトにまとめているので、人によっては多少症状が付け加えられるが、最初に覚えるには以下の通りに覚えるといいと思われる。
ADの失語
ADは記憶障害、頭頂葉症状から始まらない例も結構ある。
ADの失語は、超皮質性感覚失語、失名辞失語に近い症状を呈する。
あれそれとかの指示語が多く、言葉が出ない(換語困難)を伴う。
また、言葉は復唱できるが、話すと電文体(助詞等が抜ける、ぶつ切れの話し方)になる。
SDの失語
SDは、聞き手はどちらですか?ときくと、聞き手って何ですか?と聞き返すような、
語義失語が主要な症状になる。復唱は保たれる。
理解は、言葉が分からなくなるので、できなくなる。
PNFAの失語
PNFAは、アナルトリーが中心的な症状になる。
アナルトリーとは、ちょっと音が歪んだ感じで、発話される。
復唱や聴理解に障害はない。
LPAの失語
最初に極端に、復唱ができなくなる。
言語性の短期記憶が落ちる。生活能力等は保たれる。
CBDの失語は、特に典型的なものはない。
失行を伴ってくるとCBDかな。
CBDは、他の症状も総合して診断する必要がある。
どの進行性失語も、言葉がでないだけで、生活の質は初期には保たれる。