PTSD の症状チェック

PTSD トラウマ
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トラウマ・PTSDという言葉は、非常に日常的な言葉になりつつあります。一方で、自分の症状はPTSDではないと思っている方も多いです。

PTSDの最も重要なものはA基準と呼ばれるもので、

DSM-5によれば、「実際にまたは危うく死ぬ、重症を負う、性的暴力を受ける出来事への曝露」となります。

具体的には、交通事故、犯罪被害(通り魔に刺される、強盗、人質、拉致・監禁)、性的被害(レイプ)、DV被害、虐待、戦闘、自然災害への被災などが該当します

この中で、多いのは、犯罪被害、性的被害、DV被害、虐待が最も見過ごされやすいPTSDではないかと思います。精神科を受診されていない場合は、引きこもり状態になっている場合もありますし、ただのうつ病として治療をうけている方もいます。

PTSDのスクリーニングには、出来事インパク度尺度(IES-R)と呼ばれるものをよく使用します。以下にその内容を一部載せます。

1.どんなきっかけでも,そのことを思い出すと,そのときの気もちがぶりかえしてくる。
2.睡眠の途中で目がさめてしまう。
3.別のことをしていても,そのことが頭から離れない。
4.イライラして,怒りっぽくなっている。
5.そのことについて考えたり思い出すときは,なんとか気を落ちつかせるようにしている。
6.考えるつもりはないのに,そのことを考えてしまうことがある。
7.そのことは,実際には起きなかったとか,現実のことではなかったような気がする。
8.そのことを思い出させるものには近よらない。
9.そのときの場面が,いきなり頭にうかんでくる。
10.神経が敏感になっていて,ちょっとしたことでどきっとしてしまう。
11.そのことは考えないようにしている。
12.そのことについては,まだいろいろな気もちがあるが,それには触れないようにしている。
13.そのことについての感情は,マヒしたようである。
14.気がつくと,まるでそのときにもどってしまったかのように,ふるまったり感じたりすることがある。
15.寝つきが悪い。
16.そのことについて,感情が強くこみあげてくることがある。
17.そのことを何とか忘れようとしている。
18.ものごとに集中できない。
19.そのことを思い出すと,身体が反応して,汗ばんだり,息苦しくなったり,むかむかしたり,どきどきすることがある。
20.そのことについての夢を見る。
21.警戒して用心深くなっている気がする。
22.そのことについては話さないようにしている。

になります。

以上は、侵入症状(再体験症状)、過覚醒(知覚の亢進)、回避の主要症状が含まれています。

また、回避の項目としての解離も含まれています。

PTSDを治療するには、原則として、『今現在、安全であること』が条件になります。一方で、完全な安全と言うのは、確保することは難しいのも現状です。PTSDの治療は、過去のトラウマを克服することで、次の危険に対処できるようになるという目的もあります。例えば、性被害、DVは残念ながら非常に繰り返す危険性が高いものです。これらのトラウマに再び合いそうになる際にPTSDの治療を終えていなければ、もう一度、同じような被害に会う可能性が高いのです。

PTSDの治療は、PE療法(持続エキスポージャー療法)かEMDRです。どちらも、記憶を扱う治療法です。

犯罪被害・性被害にあわれた方は、警察等での調書作成が終ってからでないと、本人の不利になってしまうので受けることができません。この辺りは、弁護士と細かい打ち合わせを行ってからの治療になります。また、記憶に触れない範囲での、「手当」としての治療も行うことができます。

また、加害者が不起訴であったり、逮捕されていない場合でも、調書が作成されていれば行うことが可能です。実際、性被害の加害者が逮捕されないことも多いと思います。

またDVの被害にあわれた方は、加害者の方と同居中であると難しい場合があります。シェルターにいる場合は、可能です。シェルター退去後の生活でも可能です。離婚調停中も可能です。離婚調停中は、出廷した際に、少し調子を崩される方が多いです。その際も、「手当」としてのトラウマケアを行うことが可能です。

接近禁止命令を行っている場合、実際の接触の危険を判定させていただきます。加害者にあったときにフラッシュバックにあい、フリーズしてしまうよりも、PTSDに対する治療を行い、加害者と対峙し、身を守る方がより安全である場合があります。これは、性被害でも同じです。

虐待については、今現在、暴力を振るわれる環境になければ治療可能です。

治療の選択としては、短期的で自助努力が必要なPE療法か、長期的になるが負担が少ないEMDRのどちらかになります。どちらの治療が向くかどうかは、よく話し合って決めていきます。

また、PTSDの診断書は出せませんが、CAPSと呼ばれるPTSDの有無を判定できる心理検査を行うことは可能です。ただし、これは医師の診断書、意見書に変わるものではありません。(裁判での利用や、交通事故の等級変更のためには、医療機関への受診が必要です。その際に、医師がこの結果を参考にすることは可能です。)

PTSDは、専門的な治療を行わなければ、長く続いていきます。これは、残念ながら薬物療法では良くならないことがあります。抗うつ剤だけの治療では、良くならない場合、これらの治療法を検討してみるとよいと思います。

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