強迫症の治療で誤解されていること

強迫症(強迫性障害)
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 強迫症の治療や対応でよく誤解されていることについて整理していきたいと思います。

「強迫行為を我慢する」は治療にならない

 強迫症の治療で最も多い間違いはこれです。手洗いを減らそうと我慢する、確認を減らそうと我慢するなどの強迫行為を我慢する行為は、治療にはなりません。

なぜなら、「強迫症は強迫行為を我慢することができない病気」だからです。病気の症状として最もできないことにチャレンジすることになるので、失敗する確率は非常に高いです。

この方法で強迫症状が改善するのは、ごくごく初期の強迫症か強迫症っぽい程度の人までです。それ以上の症状がある場合は、この対応方法はうまくいきません。

強迫症のほとんどの人が強迫行為を辞めたい、やりたくないと思っているのに、それが達成できないことからも、この対応がうまくいかない事がよくわかります。

強迫観念を紛らわす

強迫行為が我慢できないのであれば、次にする行動は、強迫観念を紛らわすということです。例えば、目の前のことに集中をしたり、頭の中ら追い出そうとしたり、考えないようにしようとしたり…とにかく頭の中から強迫観念を追い出そうとします。

しかし、残念ながらこの方法もうまくいきません。実際は、強迫観念を紛らわそう、消そうとするほど、強迫観念は浮かびやすくなります。このような性質を思考抑制と呼び、強迫症の悪循環のとても大きなものになります

強迫症の治療に有効な認知行動療法は暴露反応妨害法しかない

これもよくある誤解です。強迫症に有効な認知行動療法は、暴露反応妨害法以外にも行動実験というものがあります。行動実験は、心配していることが本当に起きるのかどうかを調べる方法です。暴露反応妨害法と組み合わせて行うこともできますが、暴露を伴わない行動実験というものもあります。上手に行動実験ができれば、それだけでも強迫行為が減ったりします。

また、行動実験以外にも色々な知識を増やすことで強迫症状が軽くなる事があります。この方法は、まだ学術論文等では、「こういう方法もうまくいくかもしれない」程度にしか書かれていませんが、実際には良くなることもあります。

なかなか暴露反応妨害法を使って馴れていくことができない場合は、こういった別の方法からはじめてみることもとても重要です。

暴露することは、絶対にできない

強迫症の隠れた症状に「回避」と呼ばれる症状があります。これは、自分が苦手なものを避けるという症状です。強迫症の治療を考えていく上では、この「回避」が実は最も大事な症状になります。

この「回避」があるために、『暴露は絶対にできない』と思い込んでいるのです。実際には、強迫行為を我慢し続けるよりも、暴露をした方が強迫症が克服できる可能性が高いのです。

暴露するときに強迫行為をすれば、治療は失敗する

暴露反応妨害法では、嫌なものに直面する暴露と強迫行為をしない反応妨害を両方する必要があります。これは正しいことです。しかし、「暴露中に強迫行為をしてしまったからといって、暴露の効果が無効になってしまうことはありません」

むしろ、「強迫行為をしてしまったので、暴露の効果はなくなってしまった」と考えていたほうが、暴露の効果はなくなる事が分かっています。

まとめ

今回は、強迫症の方でかなり誤解がある部分をまとめてみました。強迫行為・強迫観念を我慢することで悪化してしまう場合も実は結構あります。強迫症のことを正しく知って正しい対応を身に着けていくようにした方が、強迫症もよくなってきます。

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