弁証法的行動療法

認知行動療法
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以前に、NIMHのサイトに上がっていたリネハンのビデオを訳していたものを思い出した。
最近、DBTのマニュアルは第二版がでた。新しいスキルも追加されている様子。

http://www.nimh.nih.gov/news/media/2011/linehan.shtml

最初に、ちょっとした小話から始めたいと思います。それは、長年関わりがある魅力的な患者のことです。彼女は、2年間の間、ニューヨークの病院でずっと入退院を繰り返していました。病院は、彼女を救急車で私に送る計画を立てました。私は、シアトルにいる間は、会ってみようと言いました。というのも、彼女は自暴自棄で、ナイト・ガウンにナイフを持って夜道を歩いており、小路にあるゴミ箱の後ろから発見され、ほとんど死にかかっていました。私は、彼女を長いこと治療し、ついには大学を卒業させるまでに至りました。これは大きなことです。1年以上かかる通常の治療でしたが、彼女は大学を卒業したのです。彼女はロサンゼルスに引越し、先生をしています。彼女は先生になり、技術を生徒に教えたいと話していました。私は彼女のことを大切に思っています。そんなに前のことではありません。
彼女は時々電話をくれます。一緒に食事をとることもあります。彼女は私にどんなに酷い人生であったかを話してくれます。彼女は境界性パーソナリティ障害(BPD)だけではなく統合失調性感情障害もあり、彼女は病気と教育 (訳注:ギャグ) がいかに難しいか、について話してくれます。これについては、今も支援中です。私は、彼女の身に起こったことで悲しくなることがあります。そんな時、彼女は、「マーシャ、取り乱さないで。BPDよりはましだから。」と言いました。つまり、統合失調性感情障害はBPDを打ち負かしたのです。

さて私の治療法である弁証法的行動療法(Dialectical Bhavioral Therapy; DBT)についてお話しします。私は時々、「マーシャ、君の仕事は私達に希望を与えてくれた。私は長年一人だと思っていたけれど、今はそうじゃない。」と言われます。私は、BPDの治療、自殺行動についての研究をしてきました。私の治療法は、他の人々がやっている治療と比べて良いデータが出ています。現在は精神分析の治療があります。この治療を多くの若い人々が受けています。多くの希望がありますが、私がこれからお話しする治療の方が優れています。DBTをどうやって始めたかについてですが、私は自殺のことについての仕事をしたいと思っていました。私は、NIMHで働こうと決心していました。かつて、NIMHは多くの調査員という手助けをしてくれました。NIMHは貴方達の研究について手伝ってくれます。正直に言うと、NIMHは私の仕事の殆どにおいて、共著者のようなものです。NIMHは、とても親切です。私は、高リスクな自殺者、色々な自殺行動、自傷行動などといった―シアトルの病院時代にこう呼んでいました―をなんとかしたいと思っていました。というのも、それらはとてもひどいことだったからです。そこから回復した人を調べ、分かったことですが、彼らは状況をコントロールしていました。私は、小さな助成金を得て、自殺行動に対する治療プログラムを発展させました。そして、行動療法を学び、すべての人がこの状態から回復すると確信しました。しかし、多くの問題にぶち当たりました。

最初の問題は、私が治療している人々は、とても治療拒否や、治療の無効化をおこしていました。この問題ため、治療の焦点を変えました。それまでは、純粋な行動療法を用いていました。1980年代に、行動療法はやめ、”受容(Acceptance)”に基礎を置いた治療に変えました。それにもかかわらず、問題は起こり続けました。過度の苦痛が受容をすすめることを妨害したからです。ある患者がいいました。「私の苦しみを知らないでしょう?変化させることで、私は助けられないわ。」私は言いました、「違うわ。私は変化させることで、あなたを助けることができる。」患者は言いました、「あなたは、私が間違っていると言っているの?」、私は言いました、「私は、そういうことを言っているんじゃない。」こういうことが起こっていました。

私は、彼らと仕事をするうちに、偶然にもあるアプローチに出会いました。つまるところ、弁証法と呼ばれるものです。この精神は、治療法の至る所にあります。つまり、変化の戦略を統合することです。具体的には、セラピストにおいて用いられます。セラピストの変化を促す部分、受容の戦略の部分のバランスをとるということです。(訳注:バランスをとることを、以下Dialectics;弁証法と表現している。)

次に私がとりかかった問題は、彼らがとても低い苦悩耐性(distress tolerance)の持ち主だということです。これは、全ての問題領域で起きるか、一つの問題で起きるか、一つの障害で起きるか…、知っての通り、彼らは複雑な問題を抱えています。一つの治療上の難しさは、変化を続けていくことを良く投げ出しでしまうことです。それで、私たちは常に全ての話題…つまり、彼らが経験する10の問題についてとりかかりました。つまり、回避と苦痛耐性の困難さについてです。

(スライドの訳注:変化に関する戦略と受容に関する戦略のバランスをとる)結局のところ、解決方法は、患者に効果的な受容スキル(Acceptance skill)を身につけてもらうことでした。それは、苦悩耐性を含んでいます。この受容スキルをプログラムの中ずっと学んでもらいます。私は、これを苦悩耐性と呼んでいます。危機を耐えぬく方法、最悪なことに至らない方法は、自分が望んでいた人生になっていないことに対して、根本的な受容(Radical acceptance)をすることです。これは、惨めな一生を送れという意味ではありません。また、プログラムでは変化に関するスキルを学びます。これらは、行動療法から援用しています。

しかし、私は更に問題がありました。その問題とは治療期間中の絶え間ない危機です。このために、セラピストが混乱し、治療が混沌としたものになっていました。80年代の行動療法を思い返してみてください。それらは、プロトコルに従った治療法でした。つまり、最初のセッション、次のセッションですることが決まっていました。たったひとつだけ、治療マニュアルはありました。それは、精神力動的な治療マニュアルでした。しかし、それではうまくいきませんでしたので、私はそれ以降用いていません。私の持っていた患者は、I軸ならびにII軸上の基準も満たしていました。しかし、私は基準を満たしていることは知りませんでした。私は、自殺にのみ焦点を当てていたのです。

(スライドの訳注:Target-Based Agenda[個人セッション]とProtocol-Based Agenda[スキルス・トレーニング]のバランスをとるということ)私の解決方法は、プロトコルに従った治療法を発展させることでした。例えば、私達の患者にスキル・トレーニングをすることでした。今週、このスキルを教える、次の週はこれ…という感じです。同時に、治療目標をあげる話し合いも持ちました(個人セッションのこと)。そこで、私たちは自分の問題を整理します。この問題が最初、この問題が次…という風に。そして、生命を脅かす行動は、もちろん最初にとりかかります。生命を脅かす行動とは自殺のことをさします。また、BPDは刑務所にいることもあるので、殺人もみなければなりません。それらが、生命を脅かす行動です。これらを一緒にみていきます。

私が次に出会った問題は、セラピストが感情的な問題を起こし、患者に対して過度に怖がったり、怒りや敵意を向けたり、患者に対して怒ったりすることでした。彼らは、患者を支配しようとします。これは、いかなる時にしても死に至る可能性がある人に接する上で、とても恐ろしいことです。つまり死は避けられないことになってきます。セラピストは患者を支配しようとしたり、患者を拒絶したり、攻撃しようとするかもしれません。また、セラピストの1人2人が、過度に共感的になり、患者と一緒に絶望のプールに飛び込み、治療を両者が投げ出し、全員が共に泣いてしまうようなこともあるかもしれません。

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