不倫/浮気に関連するトラウマもよくご相談があります。男女ともに不倫をしてしまった後に、婚姻関係・恋人関係を続けていくことを選択した場合、このトラウマの治療が必要になってきます。
不倫/浮気に関するトラウマの特徴
トラウマは、何らかの被害にあうことで生じます。不倫/浮気に関するトラウマの場合、トラウマの加害者がパートナーになります。つまり、加害者がかなり身近にいるという状況が生まれます。これは、他のトラウマとは全く違う特徴になります。
DVなどの場合は、加害者と被害者が別居する、離婚などが成立するなどの状況が必要になってきますが、不倫/浮気に関するトラウマの場合は、このような治療の設定ができない事になります。
他のトラウマと共通する部分
トラウマですから、以下のようなことは共通で生じます。
・過去の出来事が過去にならない
どのトラウマにも共通することですが、本人にとっては、トラウマは過去のものにならずに今現在も不倫/浮気が起こっているような感覚になります。
・過去の出来事なのに思い出すと辛い
過去のことが整理されていないと思い返しても、苦しい感じがありありとよみがえってきます。
・現在の状況に似たような出来事があると、過去のことを思い出してしまう
これは、フラッシュバックとも呼ばれる症状です。ショックが強いと、過去のことと突然思い出されることもあります。また、悪夢にうなされることもあります。
・目の前にない感情(不安・怒り)が上乗せされてしまう
似たような状況で怒りを感じた場合、フラッシュバックが起こり過去の怒り/不安も思い出してしまいます。本来であれば、少しの怒り/不安で住むことろでも、過去の怒り/不安もそれに上乗せされる事になります。
・突然、過去についての感情が出てくることがある
通常、トラウマは思い出すと苦しくなるのですが、トラウマ体験後しばらくは平気な事があります。これは、遅発性のトラウマと呼ばれる現象です。この現象は、苦しい感情を完全に封印できている状態とも言えます。ただし、この状態でも何らかの問題が出ている場合がほとんどです。
治療の流れ
トラウマというのは、周囲のケアがあれば自然に良くなっていく場合があります。しかし、それが良くならないということは、家族間の中で何らかのトラウマを維持する要因がある場合がほとんどです。その一つは、トラウマを持った本人に対する誤った対応です。
よくある間違った対応としては、「もう、過去のことでしょ」「ちゃんと謝ったでしょ」「もう、それを今言っても仕方がないでしょ」「過去のことは変えられないよ」「何回、謝ったら気が済むんだ」などの言葉があります。これらの言葉は、トラウマを受けた本人の感情を否定する言葉になります。その結果、『まだ、この人は信用できない/分かってくれない』という感情を強める事になります。
トラウマを持った本人に対しては、「それで、その時、きつかったんだよね」「苦しめて申し訳なかった」等のような共感と謝罪という対応が必要です。特に過去の苦しみに共感することが最も大切です。このような対応がなければ、トラウマの治療は開始できません。
まず、このような状態に達していない場合は、家族夫婦間での家族療法を行います。家族療法とは、お互いの関係の中でお互いの気持、お互いに求めることを出し合い、第三者を交えながら交通整理をしていくようなイメージになります。この交通整理がしっかりとなされていれば、EMDRの治療としては長くかかることはありません。