強迫症が持つ考え方の癖(信念)としては、Obsessive Compulsive Cognitions Working Group(1997)という研究グループが様々な研究をみた上で以下の6つがあるだろうと結論づけています。
①拡大された責任(inflated responsibility)
強迫症者の失敗により生じた結果に過剰に責任を感じてしまう。例:「鍵を確認し忘れた結果、泥棒が入るのは自分のせいだ」
この信念は、確認強迫と非常に関係が深いと言われているものです。確認強迫の多くは海外では加害恐怖と結びついています。この加害恐怖というのは責任を過剰に感じてしまうという考え方の癖を持っています。
②思考の重要視(overimportance of thoughts)
思考が自分の頭に浮かぶのであれば、重要な意味があると思い込むこと。考えていることが現実に起こるという認知的特徴を含む(Thoguht-Action Fusion)
健康な人であっても、頭の中には様々な考えが浮かびます。その考えは、自分の意図とは関係なく浮かぶものもあります。例えば、有名な研究としては、出産後のお母さんは、赤ちゃんを地面に投げつけるイメージがよく浮かぶと言われています。
強迫症の方は、このような侵入的なイメージ・考えに対して、過度に何かが起こるのではないかと恐れる傾向にあります。例えば、人を殺すようなイメージが出てくると、人を本当に殺すのではないか?という考えと行動とが強く結びついてしまうのです。これをThoguht-Action Fusionと呼びます。
この考え方の癖は想像型強迫と非常に結びつきが強いといえます。
③思考コントロールへの関心(excessive concern about the importance of controlling one’s thoughts)
自分の思考をコントロールしなければいけないという信念
強迫症の方の行動的特徴として、思考抑制と言われているものがあります。これは、自分の頭の中に浮かぶ考えを抑制しようとするものです。しかし思考抑制の研究からは、思考を抑制しようとするほど、思考は浮かびやすくまた、強いものになっていくことが分かっています。
この考え方の癖はすべての強迫症に共通しています。
④脅威の拡大視 (overestimation of threat)
脅威を拡大して考える
これも強迫症の治療をする上では重要なものです。洗浄強迫、確認強迫、想像型強迫などで顕著です。恐ろしいことが起こる頻度や影響力の大きさを、実際よりも大きく見積もってしまう癖です。
⑤不確定性への非耐性(intolerance of uncertainty)
不確定なことを確定させようとする。綺麗か汚いか、安全か危険なのかをはっきりとさせなければ苦しくなる
これは整理整頓強迫と関連が深いのですが、強迫症を持つ方の中でこの特性は非常に強くあります。特に強迫症状が強くなるほど、この傾向が強くなります。
⑥完全主義(perfectionism)
あらゆる問題に対する完璧な解決策があると信じる傾向、完璧な(つまり間違いのない)何かを行うことは可能であるだけでなく、必要であり、軽微なミスでさえ重大な結果をもたらすと定義される。
これも整理整頓強迫と関連が深いものですが、他の強迫症でもよく見られます。強迫行為の手順ややり方などにとてもこだわり、その手順でなければ綺麗にならない/安全ではないと思ってしまうのです。