これは、前回の続きになります。
参考:行動分析から強迫性障害・不安障害の家族対応方法を考える
増やしたい行動、減らしたい行動を明確に定義すると、次は実際にどう関わるか?ということですね。
選択的強化とは、行動分析学の用語で、増やしたい行動にはポジティブな関わりをし、減らしたい行動は無視をするという方法です。
イメージとしては、減らしたい行動を増やしたい行動に置き換えていくというイメージです。
例えば、強迫性障害患者が家族にいるとしましょう。
彼には聖域があり、彼の部屋に入る際は専用のスリッパを履く必要があります。
そして部屋の床は汚いものであり、ベッドの上だけがきれいな場所です。
洋服などが床に置かれていると、汚いと感じて、洗濯をしなおさないと着れません。
床になにものを置こうものなら、「なんで、床に置くんだ!」と怒鳴り散らし、洗いなおしを家族に要求します。
彼の日用品も全て床に触れたり、床に触れそうな場所…例えば、机の端などに置くと、何度も拭きなおさないといけません。
この時、家族に洗いなおしを要求したり、怒鳴り散らしたりする行動が減らしたい行動になりますね。
では、増やしたい行動はどうでしょうか?
増やしたい行動は、認知行動療法の勉強をする、強迫性障害の症状を勉強する、
暴露儀式妨害法をするということですね。
例えば、机の上に強迫性障害の認知行動療法についての資料を置いておき、
読んでいる様子を見つけたら、「ちゃんと、治療について真面目に考えているんだね」と褒めます。
一方、「なんで、ここに置くんだ! 床に落ちたかもしれないじゃないか! 何度も拭かないといけないから苦しんだ!」
と文句を言っても、「そうだよね…」等、最小限の反応をします。
ここでよく怒る方がいますが、怒る必要はありません。
むしろ、怒ることは本人にとって苦痛です。
こう考えてみてください、「本人は、苦しみを言っているだけで、『治療をしたくない』とは言っていない。本人もこの苦しみから逃げ出したいが、その方法を模索しているだけだ。」と。
しばらく、話をきいていると、もしかすると
「いや、僕だって、治したいと思ってるんだ」とか、
「もう、今日はつかれたし、拭かなくてもいいよ」
「もう、汚れててもいいや、その辺置いとく」
などのような発言をするかもしれません。
このような発言は、増やしたい行動ですね。
実は、待っていると、このような増やしたい行動が出現するのです。
怒ったり、強制的に触らせようとすると、このような自発的な行動を引き出せません。
強迫性障害に対する認知行動療法は、非常に根気が必要な治療です。
強制的に暴露儀式妨害法を行うこともできますが、そのようにしてしまうと、認知行動療法は続けられないのです。
認知行動療法を続けてもらうには、本人の自発的な行動を引き出して、褒めていく必要があるのです。
カウンセリングでは、実際の場面を想定してロールプレイをしていきます。
この対応は、ロールプレイを通して練習すれば、誰でも身につけられます。
コツは、行動だけに焦点をあて、その人を憎まないようにすることです。
参考:強迫性障害(強迫症)の家族がしてしまっていること・できること(再編集)