強迫性障害にしても、社交不安障害、パニック障害、全般性不安障害などの不安障害にしても、認知行動療法の中心は暴露儀式妨害法(エクスポージャー)になります。
しかし、家族が頭ごなしにエクスポージャーを無理強いしても、本人はエクスポージャーはしないでしょう。
もし、仮に家族が無理強いしてエクスポージャーを行なったとしても、その治療は長くは続かない可能性が高いです。
実際の家族相談でよく出てくるポイントを考えていきます。
家族が本人の病気をよくしたいと思っていること
これは、非常に重要なポイントです。時には、家族に迷惑をかけないで欲しいというような理由かもしれません。
しかし、家族が本人の治療を手助けしたいという気持ちがなければ、どのような介入を行なってもいずれ、破綻していきます。
本人の性格が悪いと思わないこと
コミュニケーションをする上で重要なことは、性格が悪いなどの人格を否定するような態度を取らないことです。
たとえ、行動について非難をすることがあっても、その人の性格などの人格を否定してしまえば、一気に治療から遠ざかってしまいます。
増やしたい行動、減らしたい行動を見極めること
家族対応を考える上で、最初のステップは、本人の増やしたい行動、減らしたい行動を選別することです。
例えば、治療に関する資料を読んだり、インターネットで治療法を調べるなどは増やしたい行動ですね。
一方、「もう、どうせ治らないよ」と言ったり、エクスポージャーをせずに部屋に帰っていくなどは減らしたい行動ですね。
この増やしたい行動と減らしたい行動の選別が上手くいっていないと、どんな対応方法を考えても上手くいきません。
さて、ここで「行動」という言葉が出てきましたが、これは認知行動療法(応用行動分析学)では、特別な意味を持ちます。
「死人にできることは行動ではない」という有名なテスト(死人テスト)というものがあります。
例えば、『部屋にいる』というのは、死人にもできるので、行動ではありません。
他にも、『手を洗わない』『確認しない』『ふとんで横になっている』というのも死人にできてしまうので行動ではないのです。
実際には、どのような行動が増やしたい行動に上がってくるかと言うと…
『エクスポージャーについて取り組んでみようかなと発言する/資料を読んでみる』『実際にエクスポージャーをやってみる』
『治療に関する勉強をする』
などになるでしょう。
逆に減らしたい行動は、…
『家で暴れる/暴力を振るう』 『どうせ、治らないのだと言う』『エクスポージャーなんてしたくないと言う』
『どうせ、お前には、私の気持ちなんてわからないよと言う』
などになるでしょう
ここで、あえて言動だけをとり出すのは、行動分析学の方法です。
よく患者家族は、患者の心に訴えかけようと様々な説得的コミュニケーションをとろうとします。
しかし、説得は基本的に不快な刺激になり、時として人格批判を含む危険性があります。
行動分析学の枠組みで整理していくことで、このような問題が起こらないようにしていくのです。
また、この増やしたい行動、減らしたい行動はしっかりと決めておく必要があります。
というのも、一貫性のない関わりをすると、余計に問題がこんがらがってしまうからです。
例えば、エクスポージャーを始めてした日にはほめられて、次の日には『これくらい、できないと病気は治らないよ!』と叱責されれば、
途端にやる気をなくして、エクスポージャーをしなくなるでしょう。
これは、頭ごなしに否定されるよりも、やる気を失わせる行為になってしまいます。
そこで、事前にしっかりと増やしたい行動、減らしたい行動を決めておくのです。
カウンセリングでは、増やしたい行動・減らしたい行動がしっかり決まったら、その方法をロールプレイしていきます。