ADHDの不安障害・強迫性障害に暴露する場合

強迫症(強迫性障害)
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今日の話は、少し専門的です。

社交不安障害、強迫性障害、パニック障害の方の何割かにADHDを合併しておられる方がいます。ADHDの結果として社交不安障害が出ている方もいます。

ADHDの方は、不安に対する反応が速い方が多いです。

例えば、パニック発作、社交場面などの不安場面に直面した場合に、「このままでは死ぬ」「◯◯と思われるんじゃないか?」と考え、かなり容易にパニックになります。

ADHDという特性は、不安障害を合併したときに、かなり不利に働いてしまう特性なのです。

通常、暴露儀式妨害法やエクスポージャーは、不安の対象に注意を向けることで行われます。しかし、ADHDが合併した場合は、その不安の対象に注意を向け続けることが難しい場合が多いのです。

この場合、エクスポージャーの効果は残念ながら落ちてしまいます。

ADHDには幾つか治療薬があり、これらの治療薬を併用することで、認知行動療法の効果が上がる場合があります。特に、社交不安障害などの不安障害にはこれらのADHDの治療薬が補助的に働いているような印象があります。

一方、ADHDが合併した場合の認知行動療法の修正としては、刺激を非常に短くするという点が考えられます。そして、その刺激を繰り返し暴露するということになります。

実際に、どのようにするかという点ではケースバイケースになります。

例えば、社交不安障害であれば、ロールプレイや現実場面のエクスポージャーからはいる場合が多いのですが、ADHDや自閉スペクトラム症などがある場合は、写真やイラストなどから入る場合もあります。

また、眼球運動が一定せずに、不安対象が見れない場合は、眼球運動のトレーニングが必要な場合もあります。

またADHDの方は暴露中にパニックになる方がいます。その場合は、先にマインドフルネスの練習をしてもらいます。というのも、注意をある程度コントロールできないとエクスポージャーに入れないからです。

ゆっくり歩いたり(Walking Meditation)などのエクササイズを行なったり、パニック時にわざと動作をゆっくりにしてもらったりします。ADHDの方は、パニックになると無駄な動きが多いため、余計にパニックになったりします。

逆に、私の印象では、自閉スペクトラム症を合併する方はむしろパニックになりません。自閉スペクトラム症の方は、そもそもエクスポージャーの段階をかなり細かくしなければ、上手くいきません。それから、やってみると、全くもって大丈夫であったり、何かの拍子に克服できてしまうという印象があります。つまり、食わず嫌いな人が多いのですね。

自閉スペクトラム症を合併する人の場合は、また遊びの中でエクスポージャーをかけることがよいとも思います。遊んでいるうちにいつの間にかできてしまったという感じでクリアしていく方が多いです。

精神科では、発達障害が合併すると、一般に難治例になることが多いです。大人の発達障害の場合は、発達障害の症状はむしろ目立たず、他の精神症状の方が前面に出てくると言われています。

背景にある発達障害の特性に留意しつつ、治療を修正していくという工夫が必要なのですね。

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