社交不安障害とは、対人場面において過度の緊張状態・ないし不安を感じてしまう病気です。
社交不安障害は、10代~20代に発症することが多い病気です。10代に発症するかたは、自分の性格と思いがちな傾向が強く、もともと対人場面な苦手な場合が多いです。一方、20代を超えて発症するひとは、何らかのトラウマを契機に発症する方がおられます。
社交不安障害の周辺にある病気として代表的なものは、自己臭恐怖です。自己臭恐怖は思春期に発症することが多い病気で、「自分がくさい臭いを出している」と思って、対人場面を避けてしまう病気です。「自分がくさい臭いを出している」という考えに対する確信度がゆるがない方も随分とおられます。しかし、多くは一過的に経過します。
また、PTSDなどを契機に社交不安障害の症状が出る場合もあります。しかし、これらは本来の社交不安障害とは異なるため、PTSDの対応を先にする必要があります。
社交不安障害の治療は、薬物療法としてSSRIが用いられます。心理療法としては、認知行動療法が用いられます。認知行動療法の中の技法としては、エクスポージャー、認知再構成法、ソーシャル・スキルトレーニングが用いられることが多いです。
エクスポージャーとは、不安な場面に慣れていく方法です。同じ社交不安障害の方でも、どのような自分の状態をさらけ出したくないのか?という点で随分と違います。
典型的には、0~100の間で、難しい場面をランク付けして、50辺りの所から挑戦してもらいます。
例えば、70:知らない人と話す 50:友達と話す 40:コンビニで、おにぎりを温めてもらうことをお願いする などです。
この場合、友達と話すという所を最初の目標にします。(別に70など任意の点数から始めてもかまいません。)
認知再構成は、多くの場合、行動実験という方法を取ります。例えば、「道を歩いているひとは、自分のことを全員見ている」と考えている人に対する行動実験は… 道ばたでくるくると三回回った時に、周囲のひとがどれ位、自分の方をみていたかを数えてもらうなどです。社交不安障害の方は、自分が注目されているという注意のバイアス(偏り)が起こっている場合があります。
また、ソーシャル・スキル・トレーニングと呼ばれる、社交場面の対応の技術も一緒に考えていきます。例えば、電話の取り方、わからない場合の対応の仕方などです。これは、ロールプレイを行います。
さて、治療上の注意ですが、一般に社交不安障害の方は、自分の刺激に対して注目をし、外界にたいして注目をしない傾向にあります。例えば、自分の鼓動に注目をし、聴衆はちらっとしか注意が向かない(見てないわけではない)ということがあります。
そこで、対象に対して注目するということを常に意識してもらうようにします。例えば、人混みが怖い人は、人混みの中で何人が自分の方を見ているか?みんなは何をしているか?を観察してきてもらいます。
社交不安障害の難治性を決める要素に安全確保行動というものがあります。これは強迫性障害の強迫行為に相当するもので、いわゆるもじもじ等の不安を紛らわす行為のことをさします。安全確保行動は、しっかりと反応妨害をします。必要であれば、ビデオモニタリングも行います。
また、社交不安障害に最も有効なのが恥さらし訓練と呼ばれる方法です。
これは、エクスポージャーを極限にまで勧めた方法です。
自分が、他人に思われたくないことを書きだし、その紙を胸にはり、知らない人に自己紹介をしたり、沢山の人がいる場所を歩いたりします。