強迫症持ちの新型コロナウィルス感染症対策

強迫症(強迫性障害)
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今回は、強迫症を持つ方へのコロナウィルス感染症対策について解説していければと思います。本記事は、しばらくの間、改訂を続けていくことになると思います。

新型コロナウィルス感染症対策として何が推奨されているか?

国際OCD財団によって勧められている感染対策は下記になります

  • 大規模なグループの集まり(大規模な講義クラス、スポーツイベント、コンサートなど)から離れることを意味する「社会的距離」を実践する。
  • 石鹸と水で少なくとも20秒間、特に屋外や公共の場所に行った後、食事をする前、および咳、くしゃみをしたり、鼻をかんだ後は手を洗ってください。石鹸と水が利用できない場合は、少なくとも60%のアルコールを含む手の消毒剤を使用してください。
  • 目、鼻、口など、顔に触れないでください。
  • すべての咳とくしゃみを、すぐに捨てられるティッシュで覆うか、咳/くしゃみを肘に向けることで覆います。
  • ドアノブ、カウンター、テーブルなど、多くの人が定期的に触れる表面を消毒します。

新型コロナウィルス感染症は、幸いなことに致死率は、2%と幸いなことにさほど高いわけではありません。一方で、感染症の広まりと共に死亡者数は増加しており、現在は医療リソースの問題なども発生しています。そのため、現時点では感染者を増やさないことで、重症者の人数を減らすことを目的とした対応が取られています。

強迫症の治療においては、洗浄強迫を始め、症状と非常に関連が深い問題がいくつかあります。そのため、「一時的な基準の変更」をしましょうと言われています。つまり、通常の強迫症の治療とは一時的にことなった基準を採用することで、新型コロナウィルス感染症に適応していくのです。

洗浄強迫(不潔恐怖)の方に

洗浄強迫の多くの方は、どれくらい手を洗うか?なにを危険だと判断するのか?という点で迷うと考えられます。洗浄強迫の方の多くは、感染対策上必要な手洗いではなく、個人的に感染すると考えている場面や、汚いというイメージによって手洗い・消毒行為を行っていまいます。感染対策上必要なければ、「汚い」と感じても、その洗浄行為は必要ないとおぼえておきましょう。

手洗いについて

手を洗う時間は、20秒を超えないことが推奨されています。

また、手を洗うタイミングについて、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、下記のタイミングを推奨しています。( 原文: https://www.cdc.gov/handwashing/when-how-handwashing.html )

  • 調理の、調理の最中、調理の
  • 食事をとる
  • 下痢や嘔吐をしている病気の家族の世話をする前後
  • 傷の手当てをする前後
  • トイレから出た
  • おむつを替えたり、トイレから出た後の子供を綺麗にした
  • 鼻をかんだり、咳をしたり、くしゃみをした
  • 動物や動物のエサ、動物の糞尿に触った
  • ペットのエサやおやつを扱った
  • 生ごみに触った

もし、上記のタイミング以外で手洗いをしているのであれば、その手洗いは必要ないということになります。よく見られがちな行為としては、外から帰ってきたときに着ていた服にふれる、家の中にあるものにふれるという行動の後に発生している手洗いです。これらの手洗いは、通常、必要ないと考えられます。

なにを消毒すべきか?しないでよいのか?

現在の所、洗浄強迫の治療の中でよくある質問を下記にまとめました。(原文:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html

問9 感染者が見つかった場所(外国、国内)から送られてくる手紙や輸入食品などの荷物により感染しますか?

現在のところ、中国やウイルスが見つかったその他の場所から積み出された物品との接触から人が新型コロナウイルスに感染したという報告はありません。WHOも、一般的にコロナウイルスは、手紙や荷物のような物で長時間生き残ることができないとしています。

問10 食品を介して新型コロナウイルス感染症に感染することはありますか?

新型コロナウイルス感染症の主要な感染経路は飛沫感染と接触感染であると考えられています。2020年4月1日現在、食品(生で喫食する野菜・果実や鮮魚介類を含む。)を介して新型コロナウイルス感染症に感染したとされる事例は報告されていません。

これらのQ&Aにあるように、店で購入した品物等に関しては、現在の所、消毒の必要はありません。

また、洗浄強迫の方は、「汚れが自然に風化する」という感覚がないため、外から持ち込まれたものを何日も触れずに過ごしている方がいます。しかし、通常、ウィルスは生き物に寄生しないと生存できないため、物体の表面では数日しか生存できません。

完璧主義/情報の集めすぎ

強迫症の考え方の癖として、不確定な情報が苦手になる、完璧主義といったものがあります。そのため、正しい知識がない状態、よくわからない状態に不安を覚え、完璧な情報を探し求めるかもしれません。

国際OCD財団では、これらの情報収集にかける時間を1日5分以内にすること、情報収集をする情報源を決めておくことを推奨しています。

特にテレビのニュース等は、繰り返し不安を煽ったり、不正確な情報を流したりすることがあります。以下に、信頼できる情報源をリストアップします。

また、現在ではtwitterを使った情報収集も多いかと思います。その際は、下記のアカウントを参考にすると良いでしょう

加害恐怖

新型コロナウィルス感染症では、無症候の人達が感染を拡大していると言われています。そのため、「自分が新型コロナウィルス感染症に感染していており、誰かに感染させたかもしれない」と不安になるかもしれません。

誰かに感染させたかどうかは、その場では分からないために、不安になるかもしれません。これは、強迫症の考え方の癖である、「不確定な情報が苦手になる」があるためです。このような、リスクに対する曝露を治療者と一緒に考えるということが大切です。

新型コロナウィルス感染症によって引き起こされる問題に対処する

現在の日本の状況は、1日1日で変化があります。先のことについて確かな予測はありません。つまり、何もかもが不確実です。このような状況にさらされると、どんな人でも不安・心配を感じやすいといえます。この問題は、強迫症の「不確定な情報が苦手になる」と似ていますが、強迫症がなくても不安・心配になるのです。そのため、この不確実な状況に耐えられるようにしていくという姿勢が必要になります。不確実な状況を全て解消しようとする行動は強迫行為と非常に似ています。

このように誰にとっても現在は不安で不確かな状況です。そのため、現在の生活についての不安は、健康的な不安であると言えます。自分自身が不安になっていることを認め、承認していくことが必要です。

また、感染拡大のため現在は、物理的に人と触れ合うこと、話すことが制限されています。人との繋がれないことで不安になることも多いものです。このようなときであるので、人と繋がるということが大切です。強迫症のコミュニティ等もいくつか存在しています。

現在の治療について治療者と話し合う

これまで、みてきた対応は、強迫症を持つ当事者のための一般的な対応になります。そのため、必ず、現在の状態や治療方法の修正について治療者と話しあって下さい。

国際OCD財団(https://www.youtube.com/user/IOCDF/videos)や、Peace of mind財団( https://www.facebook.com/peaceofmindfoundation/?epa=SEARCH_BOX )では連日のように、当事者や治療者が現在の治療についてディスカッションを行い、当事者からの質問を受け、その内容を無償で公開しています。

参考文献

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