想像型強迫症

強迫症(強迫性障害)
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強迫症の中には、目に見える強迫行為を行わない強迫症のタイプがあります。想像型強迫症という名前が海外ではよく用いられていますが、「侵入思考」「望まない考えの強迫症」「純粋強迫観念」などの言葉で呼ばれることもあります。

このタイプの強迫症には幾つかのテーマがあることが知られています。

 

性的な強迫観念(Sexual Orientation OCD)

性的なテーマが中心の強迫症では、「自分が性同一性障害/同性愛者なのではないか?」という強迫観念が中心です。主な強迫行為としては、自分の過去の行いを振り返り、性同一性障害/同性愛ではない証拠を確認するなどが中心です。同性と接するような社会的場面を避けることもあります。安全希求行動として、自分の行動が性的な興奮にあたるのかどうかを調べたり、他人に聞くこともあります。

また、「自分が小児性愛や異常性癖の持ち主なのではないか?」などのように性に関する不道徳的な思考を持っていたり、性的な加害者であるかもしれないという強迫観念もあります。

 

宗教的な強迫観念(Scrupulous)

宗教的なテーマが中心の強迫症では、「私は、◯◯信者としてふさわしくないんじゃないか?」「実は、自分は不道徳な人間なのではないか?(例えば、知らない間に不倫をしているのではないか?)」という強迫観念に悩まされます。この強迫症は歴史的に最も古い強迫症と言われています。強迫行為としては、頭に浮かんだ疑惑を打ち消すためにお祈りをしたり、罪の告白をすることもあります。

 

対人関係の強迫観念(Relationship OCD)

対人関係に関するテーマは、恋人や結婚相手などの親密な人間関係において生じます。強迫観念としては、「パートナーに自分はふさわしくないんじゃないか?」「パートナーから好かれていないのではないか?」「自分は、パートナーのことを好きではないのではないか?」などの強迫観念に囚われます。これらの疑惑にとらわれて、日常生活に支障が出てしまいます。強迫行為としては、相手に好きだと言ってもらう、過去の自分の行為を振り返って自分の心配を打ち消そうとするなどがあります。回避として、パートナーと一緒にいることを避ける方もいます。

 

攻撃に関する強迫観念(Harm-OCD)

いわゆる確認強迫は、人になにか危害を加えてしまったのではないか?という強迫観念が浮かびます。この攻撃に関する強迫観念の中にも、強迫行為を行わないタイプの人がいます。例えば、「自分は過去に誰かを傷つけたのではないか?」「自分は実は、犯罪を犯したのではないか?」「自分はサイコパスなのではないか?」などです。攻撃に関するテーマの場合、通常の確認強迫と違い、確認ができない場合がほとんどです。そのため、頭の中で疑惑を打ち消そうとしたり、周囲に保証をしてもらうなどの強迫行為を行います。

 

健康に関する強迫観念(心気症/病気不安症)

これは自分の健康に対する懸念や心配が出る強迫症のタイプです。以前は心気症と呼ばれていました。しかし、近年は強迫症との関連が指摘されています。実際に強迫症と合わせて持っていることも多い強迫症のタイプです。例えば、「自分は、未知の病気にかかっているのではないか?」「病院では自分の病気を見過ごされているのではないか?」「自分は、HIV(もしくは、AIDS)にかかっているのではないか?」などのものが強迫観念としてあります。このタイプは、強迫行為(安全希求行動)として病院を受診することを良くします。もしくは、インターネットで、「◯◯の安全性」などについて調べたり、周囲に安全かどうかを確認したりします。

 

このタイプの特徴は?

このタイプの強迫症は、「自分の特性」に関する強迫観念が中心になります。自分の性質など変えられないものであり、取り除けないので悩み続けます。疑惑が晴れないという感覚がもっともぴったりくる言い方ではないでしょうか。違う言い方をすれば、「自分が考えていること、自分の気持ちが信じられない」という感覚に陥ります。

このタイプの強迫症は、侵入的であることがほとんどです。例えば、「汚いものに触ったときに、苦しくなる」「車を運転しているときに、人をひいたか気になる」などのように特定の状況下で強迫観念が生じるのではなく、常に頭の中に強迫観念が浮かびます。もしくは、なんのきっかけもなく頭に浮かびます。

 

治療は?

まず、このタイプの強迫症で最も大切なのは心理教育です。自分が犯罪者ではないかと感じる人は、犯罪者であることはとても少ないのです。実際のサイコパスは、犯罪者ではないかと悩むことはとても少ないという事実があります。

このタイプの強迫症では、認知行動療法に対する難治性が指摘されています。一つは、他の強迫症でみられる外的な刺激がない場合がほとんどであるからです。そのため、現実場面暴露ということができない場合もあります。

このタイプの強迫症で多い認知的な特徴は、「考えたことが現実になる(Thought-Action Fusion)」です。例えば、「自分が同性愛者ではないか?」と考えると、それが現実になるような感じがしてきます。この考えたことが現実になるという考えに対して、暴露を用いて考え方の修正を測っていくことになります。

 

 

 

 

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