人間関係に関する強迫症

強迫症(強迫性障害)
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今回は、非常に稀な人間関係に関する強迫症(Relationship OCD:ROCD)に関して紹介します。

人間関係に関する強迫症とは?

人間関係に関連する強迫観念を中心とした強迫観念に悩まされるのが人間関係に関する強迫症です。Danny Derby博士、Guy Doron博士が中心となり研究を進めています。彼らの主催するwebサイト ROCD.netより症例を引用したいと思います。

デイビッド(32歳の男性 )が私のオフィスに入り、自分の問題を話してくれた。「私は恋人と付き合って1年になるが、これが私にとって正しい関係かどうかを考えてしまう。私は街やFacebookで他の女性を見かけるのだが、その女性達といたほうが、もっと幸せになれるんじゃないかと考えてしまう。彼女たちといたほうがもっと愛を感じられるのだろうか?私は、友達にどう思うか尋ねてしまう。私は常に彼女たちに対する自分の気持を確認してしまう。私はパートナーを愛していると思っているが、何度も何度も確認しなければならない。

ジェーン(28歳の女性)は2年間の交際の中で、様々なことに気が取られてしまうと話す。「私はパートナーを愛しています。彼なしでは生きていけないことはわかっていますが、彼が正しい体型を持っていないと思うのを止めることはできません。私は彼を愛していると分かっています。そして、この考えが合理的でないことを知っています、彼はかっこいいのです。このような考えを持っている自分が嫌いです。見た目重要だと、それほど思っていないのですが、頭から離れません。この強迫観念がいつも私の頭の中に飛び込んでくるのです。これはもう手に負えません。この強迫観念のせいで、私は憂鬱になり、私たちの恋愛関係をむちゃくちゃになります。他の男性を見ると、他の男性に惹かれるので、このように彼と結婚することはできないと思います。なぜいつも彼の容姿を他の男性と比較しなければならないのでしょうか…」。

https://rocd.net/

この症例をみると、これが強迫症のように見えないかもしれません。しかし、この症例にあるように、「自分の考えはおかしい」という不合理感があります。自分の考え・価値観ではないのに、このような考えが浮かんでしまい、振り払えないというのが強迫症なのです。さらに言えば、目に見える強迫行為を行わない、想像型強迫症の一種になります。

強迫観念は?

Guy Doron博士らによれば、関係性に関するもと、パートナーの存在に関するものに分かれるようです。

関係性に関するものとしては、パートナーに対する感情、パートナーの自分に対する感情、そして関係性の正しさに関するものが中心です。

例えば、「この関係性は、私達にとって正しい関係性なのだろうか?」、「これは本当の愛なのだろうか?」、「私は正しいと感じているのだろうか?」「私のパートナーは本当に私を愛しているのだろうか?」というものです。

パートナーの存在に関する強迫観念としては次のようなものがあります。

パートナーの身体的特徴に関するもの:「私の彼女の鼻は大きすぎるのではないか?」、社会的性質:「彼は社交的ではない」、「彼女は人生で成功するために必要なものを持っていないん」、道徳性、知性、情緒的安定性:(例:「彼は感情的に安定していない」、「彼女は頭が悪い」)などです。

この2つの強迫観念は同時に発生することが多く、お互いに影響しやすいことも指摘されています。また、どちらかと言えば先にパートナーの欠点について気をとられることが多いようです。

またこれ以外にも神との関係についての強迫観念もあるようです。こちらは、想像型強迫症でもよくでてくる強迫観念です。

強迫行為は?

Guy Doron博士ら が指摘する強迫行為としては以下のものがあります

自分の感情、行動、思考について常に確認をしてしまう。例えば、「私は愛を感じているのだろうか?」「他のものを見ているんじゃないだろうか?」「私は彼女について批判的な考えを持っているんじゃないだろうか?」「私は何かを疑っているんじゃないだろうか?」と監視しているのです。

他人の人間関係と自分の人間関係を比較すること。例えば、恋愛映画、テレビのコメディーの登場人物などの他人と自分の人間関係を比較する

パートナーとの良い経験を思い出す

友人、家族、セラピスト、占い師、霊媒師に、自分自身の人間関係について相談をする

また、回避行動として、自分の望まない考えや疑いを引き起こすような状況を避けようとします。例えば、恋をしていると思っている友人、「完璧な」関係を持っている人などです。また、完璧な人間関係を持っている人、映画の登場人物のように強くて情熱的な愛を持っているロマンチックな映画を見ることを避けている場合もあります。

これは本当に強迫症なのか?

ここまで、読んでいただいても、このような疑問が浮かんでくるかもしれません。実際には、私もこのような疑問がずっとありました。ただ、実際にはこのようなご相談は多くあります。

実際にご相談で多い強迫観念は、「私は本当に恋人のことが好きなんだろうか?」「私は、知らない間に不倫をしているんじゃないだろうか?/そういうよこしまな考えを抱いてしまっているんじゃないか?」「私とAさんの関係は、本当に友達/恋人なのだろうか?」というのが圧倒的に多いです。

中には、他の強迫症の症状を持っている方も多いです。また、強迫行為として、パートナーや友人にこの疑惑を打ち消してもらうために、「私は好きだよと言う」「好きだと言わせる」「不倫はしていないと告白する」「私達の関係は友達だと言ってもらう」と言った強迫行為をしている方もいます。

また、再保証を求める行動として、彼/彼女との言動を話し、自分の本当の感情はなんだと思うか? 彼/彼女はどう思っていると思うか?などを質問していることもあります。

さらに非常に特徴的なのは、「自分でも、こんな考えにとらわれているのは変だ」という洞察がほとんどあります。これが、通常の恋愛・人間関係では考えられないことです。

まとめ

今回は、あまり知られていない人間関係に関する強迫症をご紹介しました。非常にマイナーで、あまり強迫症だと気づいていない方も多いかと思います。これを気に広まっていくといいなと思います

参考

Relationship OCD (ROCD) | Intrusive Thoughts
Relationship OCD, or ROCD, is a subset of OCD in which a sufferer experiences repetitive fears that they are in the wrong relationship.

Guy Doron and Danny Derby 2014 The OCD Newsletter OCD fandation https://iocdf.org/expert-opinions/relationship-ocd/

Guy Doron and Danny Derby :https://rocd.net/

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