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国際トラウマ・解離研究学会（ISSTD）は、解離性同一性障害（DID）の治療ガイドラインを定期的に改訂しています。この第3版のガイドラインは、DIDおよび類似の解離性障害（DDNOS）の治療に関する実践的なガイドを提供することを目的としています。今回は、そのガイドラインの要約です。
診断と有病率
解離性同一性障害（DID）は珍しい病状ではなく、一般人口における有病率は1％から3％とされています。しかし、臨床医の教育不足やバイアスにより、診断が難しく、過小診断されることが多いです。正確な診断は効果的な治療に不可欠です。
診断基準（DSM-IV-TR）
- 二つ以上の異なる同一性または人格状態の存在。
- これらの同一性が繰り返しその人の行動を制御する。
- 重要な個人情報を思い出せないことがある。
- 症状は物質の影響や他の医学的状態によるものではない。
疫学と臨床的特徴
DIDは、解離症状やトラウマ後ストレス障害（PTSD）の症状と、抑うつや不安などのより一般的な症状が混在する形で現れることが多いです。この複雑さにより、誤診されることがしばしばあります。
治療の原則
解離性同一性障害（DID）の治療は、一般的な精神療法の原則に基づきつつ、特定の解離症状に対応する特化したアプローチを採用することが推奨されます。治療は次の段階的アプローチに従います：
- 安定化
- 安全性の確保: 患者が自傷行為や他者に対する暴力を避けるための環境を整えます。
- 症状の軽減: 急性の解離症状やその他の苦痛を軽減するための介入を行います。
- グラウンディングテクニック: 現実に注意を戻すための方法を教えます。
- ストレス管理: ストレスの認識と対処方法を学びます。
- トラウマ処理
- 記憶処理: トラウマ記憶の安全な処理と統合を支援します。
- 感情調節: 感情の適切な表現と調節を学びます。
- 曝露療法: 安全かつコントロールされた環境で、トラウマ体験に向き合います。
- 統合とリハビリテーション
- 同一性の統合: 複数の人格の間の協力と理解を促進し、最終的には一つの統合された同一性を目指します。
- 日常生活の改善: 社会的、職業的な機能を改善し、正常な生活を取り戻します。
有効な治療法
DIDの治療には多くの有効なアプローチがあります。以下は主な治療法です：
- 精神療法（心理療法）
- 認知行動療法（CBT）: 認知の再構成と行動の変化を通じて症状を軽減します。
- 眼球運動による脱感作と再処理法（EMDR）: トラウマ記憶を処理するための方法です。
- 内観療法: 患者が自分自身を深く理解するのを助けます。
- 精神分析療法: 無意識のプロセスを探ることで、症状の根本原因に取り組みます。
- 薬物療法
- 抗うつ薬: 抑うつや不安の症状を軽減します。
- 抗不安薬: 不安症状を軽減します。
- 抗精神病薬: 解離や幻覚の症状を軽減します。
- 補完的治療法
- 芸術療法: 絵画や音楽を通じて感情を表現します。
- 動物介在療法: 動物との交流を通じて安心感と安定感を得ます。
- ヨガや瞑想: 心身のリラクゼーションとストレス管理に役立ちます。
結論
このガイドラインは、DIDの診断と治療に対する洗練された理解とアプローチの重要性を強調しています。臨床医は最新の研究を把握し、個々の患者のニーズに合わせた治療を行うべきです。治療の成功には、患者と治療者との間の信頼関係の確立が不可欠であり、段階的かつ包括的なアプローチが推奨されます。
引用
International Society for the Study of Trauma and Dissociation. Guidelines for treating dissociative identity disorder in adults, third revision: summary version. J Trauma Dissociation. 2011;12(2):188-212. doi: 10.1080/15299732.2011.537248. PMID: 21391104.
