強迫性障害の患者家族にできること:本人の状態によって戦略を変える

強迫症(強迫性障害)
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強迫性障害の患者家族から相談を受けたときにいつも思っていることをまとめてみます。

家族相談から始まる場合、多くは患者さん本人が医療機関に繋がっていないか、病院に継続的に受診をしていない、認知行動療法をしないなどが多いです。

どの程度、強迫性障害を理解しているか?

まずは、本人の症状を把握していくことも大切ですが、強迫性障害の病気を本人がどの程度理解しているか?という点が重要になります。

その中で、ポイントになる点は

・強迫行為に本人が苦しんでいるか?

・強迫行為を行なっても、安心感が得られないと自覚しているか?

・強迫行為を止めたいと思っているか?

・認知行動療法について知っているか?

・暴力行為をしているか?

という点でしょう。以下に少しづつ解説を載せていきます。

強迫行為に本人が苦しんでいるか?

これは非常に大切なポイントです。正確性の強迫や、ためこみ症など一部の強迫性障害は強迫行為を行うことですっきり感・納得感が出るために、強迫行為を行うことが苦痛になっていない場合があります。

NOの場合の対応としては、強迫行為を行うメリットとデメリットを自覚してもらうように働きかけます。これは、直接そのように本人に質問することが最も有効です。例えば、「ものを貯めこんで行くことのメリットとデメリットって何?」という形で聞きます。先にメリットを聞くことがコツになります。メリットがでると、「他には?」と聞き、強迫行為を行うメリットを沢山あげてもらいます。

人間は、案外、「その行為を行うメリットは?」と訊かれるとメリットは出てこなかったりします。そうすると、「あっ、こんなメリットしかないのか…」と思ってしまうものです。

YESの場合の対応としては、苦しんでいることに共感します。沢山共感します。しかし、だからといって強迫行為に巻き込まれてはいけませんので注意して下さい。本人が何が辛いのかを丁寧にきいていく形になります。

強迫行為を行なっても、安心感が得られないと自覚しているか?

強迫行為は、その行為を行なっても安心感は得られません。例えば、手洗いにしても何度も手を洗ってしまったり、長い手洗いを終えてもどこかで不安感が残っているものです。

NOの場合の対応としては、「手を洗って、綺麗になった感じがする?」「確認をして、どこか落ち着くの?」などのように何度もきいてみてください。本人が「落ち着く」と言ってきたら、「一瞬は落ち着くのね。その後は?」と会話を続けてみて下さい。このやり取りを続けていくと、段々と「強迫行為をすれば、いつかは安心感が得られる」というものが思い込みだということに気がついていきます。

YESの場合の対応としては、その感覚に気づいていることが大切なことであると伝えましょう。とても重要なことに気がついたと伝えましょう。

強迫行為を止めたいと思っているか?

これは、強迫行為に苦しんでいることとほぼ同じような内容になります。しかし、苦しんでいることから、止めたいと思うまでには一つステップがあるように思います。例えば、「手洗いはいやだ…きついし…」と言っていても、一方で手洗いをやらないと落ち着かないというステップにいる方がいます。

NOの場合の対応としては、「手洗い、長くやってると苦しいね」と共感していきます。「強迫行為を続けると苦しい…」という気持ちが高まると、「止めたい」という言葉が出てきます。

YESの場合、強迫性障害に対する認知行動療法のやり方について説明します。

認知行動療法について知っているか?

認知行動療法のやり方を知っていなければ、認知行動療法を実践しようと思ってもできません。認知行動療法の最も重要なパートは心理教育になります。

NOの場合の対応としては、強迫行為を行なっても安心感が得られないという内容を復習します。また、口頭で説明すると余計な感情が入ってしまい、なかなか上手くいかない場合が多いです。長い書籍だと読まない可能性もあります。そこで、インターネット等の短い文章(このブログでもよいと思います)を印刷して渡すという方法もよく用います。

YESの場合は、実際にどの辺りからできそうかを考えていきます。変化は、少しづつ具体的にやっていくことがよいです。

暴力行為をしているか?

これは、非常に大きな問題です。暴力行為がある場合は、事前にどのような場面でそのような行動がでるかを予測することが必要となります。

暴力行為等がある場合は、また別の対応が必要となります。

変化と受容のバランスをとる

弁証法的行動療法には、変化と受容のバランスをとるという言葉があります。

変化とは認知行動療法をしていくということです。受容という言葉は共感的に接することです。

治療は変化と受容を行ったり来たりします。認知行動療法を続けていく上でも、辛い、良くならないという場面も出てくるでしょう。その時は受容の戦略を使います。

やる気があり、変化しようと考えている場合は、変化の戦略を使います。この両方がかけても治療は長続きしません。

本人が明らかに間違った対応をしている場合…

家族相談の場合は、認知行動療法を家族が正しく理解することが、最初に必要となります。その中で、本人が間違った対応をしていることに気がつくことがありかもしれません。

例えば、「部屋に入るときに、くつ下を変えれば、床にものを落としても洗わなくて済む」などの様な方法です。

※なぜ、この方法が間違っているかは… 参考:強迫性障害(強迫症)のよくある質問 を参照

このような場合、「本人がその行動を選択した結果、その現象が起こっている」という関係性を明確にする関わりが必要になります。

例えば、ある時、自分の部屋では床に物を落としても大丈夫だと思えるようになったとしても、家の別の場所でものを落としたら、なぜか、汚いような気がしてくるという現象に気がつくかもしれません。

間違った対応と言うのは、その方法では上手くいかないから間違っている方法なのです。つまり、どこかで上手くいかないのですね。 自分の部屋に入る時に、くつ下を履き替えたけれど、そのくつ下についていた汚れが地面に落ちたかどうかが気になりだすかもしれません。そのようなときに、「自分の部屋にくつ下を履き替えて入る」という行動をすると、「余計に、不安が増えている(囚われが増えている)」という関係が成り立っていることを理解してもらうわけです。

言い方を変えれば、「間違った対応をしても、その結果を見届け、失敗した所で、どの行動がその結果を引き起こしたのかを伝えるのです」

間違っても伝えるだけで非難をしてはいけません。時間はかかるかもしれませんが、このような方法の方が結果的には上手くいきます。

なぜなら、この方が本人の治療へのモチベーションが高まるからです。

家族自身の精神的健康

様々な対応方法があったとしても、最初に必要なのは家族自身の精神的健康だと思います。

まずは、家族がある程度の健康状態が維持できなければ、家族介入について取り組めません。

参考:強迫性障害(強迫症)の家族がしてしまっていること・できること(再編集)

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