強迫症への暴露儀式妨害法にマインドフルネスをどう組み合わせるか? より効果的な治療戦略

強迫症(強迫性障害)
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最近は、マインドフルネスが認知行動療法に入ってきたおかげで、このあたりの情勢は更に複雑になっています。

マインドフルネスとは、今の自分の心の状態を観察し続けている状態になります。その時、観察以外の行動をとっては行けません。特に、これはいい・悪い等の判断をしないということにもなります。実は、マインドフルネスと暴露儀式妨害法は表裏一体であり、同じ現象の別の側面を強調しているだけなのです。

参考:マインドフルネス と エクスポージャーは、表裏一体

例えば、便器に触るエクスポージャーをしている最中には、「あとで洗おう」「これは、きれい・きれいなんだ!」等の心のなかでの回避行動・強迫行為を妨害する必要があります。これを達成する方法の一つがマインドフルネスなのです。「いま、あなたの心のなかに起こっていることを観察だけして下さい」ということになります。

このマインドフルネスとエクスポージャーの関係は、「うつと不安の統一プロトコル」という認知行動療法のプロトコルで明言されています。

さて、このマインドフルネスは習得をするためには、2つの段階があると言われています。仏教ではこの修得するための瞑想法をサマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想と分けています。

サマタ瞑想は、先に行うべき修行です。何かの物理的な対象に注意を向け、その注意がそれた時に、また、その対象に注意を向けなおすという瞑想法です。これは、ボディスキャンや、呼吸による瞑想が該当します。

一方、ヴィヴァッサナー瞑想は、自分の感情・思考に注意を向け続けます。サマタ瞑想ができなければ、ヴィヴァッサナー瞑想はできないと言われています。このヴィヴァッサナー瞑想こそがマインドフルネスの中核なのです。

臨床上、ハビット・リバーサルを用いる場合は、暴露儀式妨害法を使っても不安がいまいち上がらない人、暴露儀式妨害法がしにくい、マインドフルネス・トレーニングをしても意味ないか、するまでもないなと思う人などが該当する気がします。運動的タイプの強迫が多くは該当しますが、運動的タイプでも暴露儀式妨害法が効果がある場合があります。

例えば、正確性、非対称性、数数え等では、暴露儀式妨害法である程度できます。ただし、これらにはマインドフルネス等を追加しないと、これらの衝動制御はできない気がします。

マインドフルネスも概念が混乱していて、複数のものに同時に注意を向ける、自分の心が動いた時にそれを上手くキャッチする、自分の心の状態を観察し続ける等色々とあります。

正確性等の場合は、複数のものに同時に注意を向ける・均等に情報をキャッチする、自分の心が動いた時にそれを上手くキャッチするという側面を重視します。仮に、ヴィパッサナーとサマタに分けるとすると、サマタ瞑想に近いと思います。この辺りは、難しいですね。自分の身体感覚ではないから、厳密にはヴィパッサナーでいいような気がしますが、何かに集中し続けるという意味ではサマタ瞑想に近い感じです。

別の言い方をすると、正確性等の強迫の場合は、いつこれがでるかわからないのですね。なので、いつも正確性の強迫が出ても、エクスポージャーできるように、気をつけるようにしてもらう。そして、正確にしようという衝動に対して、エクスポージャーもするけれど、同時に正確にしなかったらどういう行動をとるか?ということに注意を向けてもらうのです。
例えば、質問をせずに曖昧に理解する等です。

さて、強迫症のハビット・リバーサルでよくあるのは、強迫性緩慢です。強迫性緩慢は、基本的にはペーシング等で対応しますが、中には移動中に後ろを振り向いて確認してしまうなどの行動がでる場合があります。そして、この場合、強迫観念が明確でない場合が多いです。

参考:強迫性緩慢

こういう場合は、振り向くという行動と両立しない行動をひたすら練習してもらい、その感覚を叩き込みます。そして、振り向きたいという衝動にかられたら、ふりむかないで歩くという行動に集中して、その衝動が過ぎ去っていく様子を観察してもらいます。

…とかくと、マインドフルネスやサマタ瞑想に近いですね。

実際、原井宏明先生の臨床をみると、マインドフルネス・サマタ瞑想に近い感じですすめてあります。山上敏子先生、飯倉康郎先生の臨床をみると、行動を指示するという感じで進めています。両者は強調している面は違いますが、やっていることは非常に近いです。

ハビット・リバーサルが適応になる強迫症状は、摩訶不思議な症状が多く、ブログ等では紹介できませんが、こういう感じです。特に、Just right feelingが強い場合に有効な印象を受けます。

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