マインドフルネスの感覚

マインドフルネス
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マインドフルネスは、非常に説明しづらいものです。基本的には、「自分の心の状態を観察する」のです。今回は、少し体験を元に説明を考えてみます。

◯なぜ、このように苦しむのか?と観察してみる

「自分の経験に心を開く」という感覚に近いかもしれません。「この苦しい感情は、どうして起るのか?」と、自分の心の仕組みに関心を持って行きます。100年後の世界から、感情を持ったロボットがやってきて、そのロボットの仕組はどのようになっているんだろうか? どういう仕組みで動いているのだろうか? というような興味・関心を持った目で見ていきます。

外国の人と出会って、自分と違う風習や考え方に驚き、どうしてこんな風習ができたのだろうか? どうしてこんな考え方をするのだろうか? と興味を持つような目で自分を眺めていきます。

◯現在にとどまる

「なぜ、いまの自分は苦しいのか?」と考えた時、過去に◯◯ということがあったからだ…と過去に遡って考えてしまう方がいます。確かに、過去の経験から今を理解することは大切ですが、必ず「現在」に戻ってくる必要があります。なぜなら、マインドフルネスは「今の自分」を観察することだからです。過去を観察したがる場合、「今を観察するのが怖い」「今の経験を感じることが嫌だ」「今の自分を認めることが嫌だ」などのような気持ちがあるかもしれません。

◯思考・感情に取り合うと、それはもっと大きくなる

これは、マインドフルネスのエクスポージャーとしての側面です。不安が減らない、嫌な気持ちが収まらないという場合、その思考や感情に取り合っている・反応しています。

思考や感情に対して何らかの反応をするというのは、強迫性障害で言えば、強迫行為をしているようなものです。この行動を続ける限り感情はおさまっていかないのです。

◯二次的な反応に気がつく

自分の感情を否定することはとても多いのです。例えば、「友人にものをもらってありがたいと思うはずなのに、自分は嬉しくない。自分は性格が悪い」、「自分の両親がなくなって、悲しいはずなのに、自分は涙もでない、とても冷徹なやつだ」「こんな些細な事でイライラするなんて、自分の心はせまい」「自分は、この程度の感情をコントロールできないなんて、だめなやつだ」などです。これらには、全て自分自身に対しての二次的な反応があります。「こんな感情を持っている自分は駄目だ」と自分の感じた反応を否定しているのです。これらの反応に気づいて、まずは最初に感じた感情はなんだろうか?と考えていく必要があります。そのためには、「最初に感じた感情を認める」ことが必要です。「友人にものをもらってありがたいと思うはずなのに、自分は嬉しくない。」、「自分の両親がなくなって、悲しいとは思わない」「こんな些細な事でイライラする」「自分は、この程度の感情をコントロールできない(感情的な反応を起こしている)」という事実を認めていきます。

自分が最初に感じた感情を否定すると苦しくなっていきます。自分が感じたことは、なんであれ正しいのです。

◯「頭に沢山浮かぶので、苦しいです。」

とても感情的な反応が起こるとき、沢山の考えや感情が湧いてきます。このばあい、一つの考え、一つの感情をじっくり観察してみましょう。

◯「感情を手放す」

これは、よく出てくる表現です。しかし、精神疾患から出てくる不安などは、手放そうとすると余計に手放せないことに苦しむかもしれません。また、「手放そう」とすると、「手放せないこと」に余計に苦しむかもしれません。「感情を手放す」という状態は自然にやってきます。

◯「苦しんでいる自分を俯瞰的にみるということでしょうか?」

この質問は、YESでありNOです。確かに観察しようとしたり、自分が苦しんでいる様子をみるという意味では俯瞰的な視点で自分を観察していきます。一方で、自分の感覚にとても敏感になっていく(気づきを増やす)という要素も必要になります。俯瞰的の中に「距離を取る」という要素が入ってくると少し違ってくるような気がします。自分が感じている感情に対して、より敏感になっていくという感じです。

◯「我慢するということでしょうか?」

これは、違います。我慢しようとするとき、注意をそらそう、圧倒されそうな嫌な感覚を紛らわそう、逃れたい、消したいという気持ちに気がついてください。がまんがまんと考えた時、その感情を否定しようとしています。その感情を受け入れていくのです。

◯「うまくいっているか分かりません」

まずは、自分が「うまくいっているか分からない」と不安になっていることに気がついてください。もしかすると、「よく分からない」「自分には習得できない」という気持ちもあるかもしれません。これらに気がついていきましょう。瞑想やマインドフルネスを日々行っていれば、程度の差こそあれ、何かに気づいていきます。そして、この気付きはどんなものであれ、上手くいっているのです。

◯「どうなったら、上手くいっているのですか? 上達しているのですか?」

上達しているという一般的な指標はないように思えます。幾つかの心理尺度はありますが、これらでは規定できないような要素もあるような気がしています。

「自分が感情にとらわれていることに気がついた」「自分が気がついていないことに気がついた」「自分がすでに沢山の気づきを得ていることに気がついた」「とても多くの反応を自分がしていることに気がついた」という感想がきかれれば、その方は上達しています。

◯上達するためにはどうしたら良いですか?

これは、瞑想をやり続けるしかありません。時には色々なワークが気づきを促進することがありますし、瞑想をひたすら続けることが気づきに繋がることもあります。

◯「抽象的でよく分かりません」

これは、とても悩むところですが、具体的な説明をすると、気付きがそれ以上進みません。認知行動療法のレベルで説明すると、その瞬間瞬間の「自分が考えていること(思考)」「自分が感じている感情やその強さ」「自分がその出来事に対して取っている行動」「その出来事に対して生じている身体反応」に全て気がつくことです。

◯「分析していますが、よくなりません」

これは、認知行動療法レベルの気づきだとこうなります。「穏やかに観察する」という点を思い出してください。穏やかに観察したとき、興味関心を持って自分をみた時、反応は遅くなるか止まります。「自分の感情には気がついています」という気持ちになる時、自分の経験に対しては閉じられていると思ってください。

◯「はやく良くなりたいのですが…」

このようなことが浮かんだ場合、感情をどこかにやりたい、消したいとどこかで思っていると思います。良くなることは結果です。これを求めてしまうと、「良くなっていない」ことに敏感になっていき苦しみます。

◯「心配していることに気がついているのですが、心配は消えません」

心配とは思考の連鎖です。心配にとらわれていると、心配を消したくなってきます。しかし、心配が思考が次々に湧き上がってくるものであると分かり、その湧き上がってくる思考にとても興味を持って観察しようとすると心配は、既に心配ではなくなっています。

人間は考えが絶えず生まれる生き物です。脳がアイドリング状態の際に、思考はどんどん生まれてきます。しかし、思考や心配が沢山でてきたとしても、世界は変わりません。心配が始まる前と、心配にどっぷりつかった10分後では、気分はぜんぜん違うと思いますが、物理的にはなんの変化も起こっていません。世界も大した変化は起こっていません。心配や反すうは、自分の内的な刺激(思考)に対する反応の連鎖なのです。外的な要因はないのです。直感的な説明をすれば、大自然の中にいる自分を想像してみてください。自分なんかが色々と心配したり、考えこんだとしても世界には何の変化も起きていないのです。日は登るし、川の流れも変わりません。朝が来れば多くの人は起きて仕事や日中の活動をはじめます。

◯「相変わらず、沢山反応してしまいます。全然成長しません」「いらいらすることは減りません」

反応することを止めることはできません。人間は、常に何かに反応しています。沢山の反応をしても、その反応している時間が減ってくるというのがマインドフルネスです。結果的に、反応が減ってくるかもしれませんが、それは結果です。

もしかすると、「反応しないようにしなければならない」と思っているかもしれません。「反応している自分は駄目だ」と思っているかもしれません。むしろ、沢山の反応に気がついてください。反応が少ない人ということはありません。それは、反応に気がついていないだけです。

◯「仕事に遅れる、このまま死ぬんじゃないか等、突発的な不安や痛みが出てくる時、マインドフルネスではどのように考えるのですか?」

このような突発的な不安がでてきた時、人はその場から逃げ出そうとしたり、何かをぎゅっと握りしめる、ジタバタするなどの行動をとろうとしてしまいます。実際にこれらの行動をとっても良いのですが、これらの行動で自分の気を紛らわそうとしているということに気がついていきましょう。例えば、トイレが我慢できない時に、歯を食いしばったり、ジタバタするのも一例です。歯を食いしばるというのは、強い刺激を体にわざと与えて、注意をそらそうとする営みです。リストカットもこのような場合があります。

この時、痛み・不安から逃れたい・この苦しみを消したいと思っていることに気がついていきます。これらの苦しみを消そうとすればするほど、この苦しみに苦しみます。予期不安が高まり、心臓がドキドキしている。これらの不安が高まれば、発作が起きるかもしれない、どんどん不安が大きくなっている。とその不安になっていく過程を観察していきます。「ヤバイ」「どうしよう」「このままでは」などは、状況に対する反応です。これらの反応にも気がついていきましょう。沢山、自分が反応していることに気がつくはずです。反応しても良いですが、反応が絶えず起こっていることに気がついていきます。

不安の種が、波紋が広がるようにどんどん大きくなっていく様子も観察していきます。じんじんという痛みが、ずきずきという痛みに変わり、体の様々な場所に広がっていく様子。足が震えたり、手が震えたり、体の変化がどんどん起こっていく様子を観察していきます。

時には、どんどん状況が悪化していくことに不安になっている自分に気がつく必要があるかもしれません。5秒前の自分と何が変わったか?と考えてみてもいいかもしれません。物質的にはほとんど変わらないのに、5秒という時間さえも長く感じるかもしれません。その間に、自分がどのように変化したかを観察してみましょう。普段は5秒なんて時間はほとんど無意識に過ごしています。

将来のことを考えると、少し不安になったり、明日のことを考えると少し気持ちが動くかもしれません。自分の苦しんでいることを想像しただけで調子が悪くなる方は、ちょっとだけ調子が悪くなった場面を想像してみてください。それだけで、調子が悪くなるとしたら、その不思議な事実に気がついてください。怖い場面に触れたわけでも、触ったわけでもないのに、少しだけ不安になるのです。頭に浮かんだ内容が少しだけ違うだけで、こんなにも変化が生じることは不思議ですね。このような事実を、面白いと思ってください。穏やかに観察するためには、この不思議な体験に興味を持つ必要があります。

認知行動療法では、思考と感情のように取っ掛かりを分けて考えていきます。しかし、自動思考は無数にあります。一つの場面、一つの状況で10個以上は浮かんでいると思います。強迫観念などのような症状であっても、絶えず違う反応が浮かんでいると思います。これらに気がついていきましょう。

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