私は、もともと認知行動療法をしており、精神医学的な病気に対する心理療法を専門にしています。
しかし、最近、よく明確な精神疾患をお持ちでないのに、苦しみ続けている方によく出会います。
これは、アダルト・チルドレンや毒親被害の方であったり、心理的トラウマ、劣等感を抱える方、慢性的な虚無感を抱える方、怒りが収まらない方、介護疲れの方、何か上手くいっていないと感じる方など様々です。
通常、感情はその感情を消そうとすれば、するほど、生活の機能障害が大きくなります。例えば、うつ病であれば、抑うつ気分から逃げよう・避けようとすれば、寝たきりの生活をしたり、ぐるぐる考え事をしていることで、不快な感情から逃れようとします。
しかし、このような病気よりも更に上記の心理的な悩みは、細やかな観察が必要になってきます。この細やかな観察を生活の中に広げていくことがマインドフルネスの本質でもあります。
マインドフルネスによる気づきの一歩は、言語化していくことです。なぜ、このような考えを持ったのか? どのような感覚から、今の感情が起こったのか? 今の感情はなんなのか? と自分が気がついていることを言語化していきます。しかし、言語化していくことのみが気づきではありません。
たえず、様々なことに気づいていくことが瞑想やマインドフルネスの向かう先にあります。一つの気づきが、次の気づきを生み出します。
気づきとは何か?
気づきには色々な段階があり、様々な気づきがあります。
例えば、今まで気にしなかった感情に気づく、どのような考えからその感情が生まれたのかに気づく、その背景にある自分自身の価値観に気づく、ある感情にとらわれ出す瞬間に気づく、人を信じることに気づく、自分の価値を置いているものに気づくなど様々なものがあります。
これらに気づいていくのです。これらに気づいていくためには、自分の心の状態に関心をもって関わることが大切です。どうして、自分はこのような行動を取るのか? 自分はどうしてこのような感情を持つのか? など、素朴に考えていくことが気づきを生み出します。
自分を受け入れていくこと
怒り、嫉妬、妬みなどの感情は、その感情を持っている自分自身に対して、「私はなんて心の狭い人間だ」「性格が悪い」などのような反応を産みがちです。まずは、そのことに気がついていく必要があります。
感情は自分の中から生じるものであり、その感情を消そうとすればするほど、その感情は大きくなり、自分を苦しめます。自分の中から出てきた感情を認めていくことが必要です。自分を受け入れていくとは、別の言い方をすれば、「自分をゆるすこと」「自分がその気持を持つに至った経緯を認めること」ともいえます。
手放すということ
「手放す」とは、自分のこだわっているもの、手元に置いておきたいもの、感情などを手放していくことです。怒りを手放す、恐れを手放すいろいろな言い方があります。自分のこだわっているもの、執着しているものを手放していくことで、自分の人生を生きれるようになっていきます。
自分を生きるということ
人を信頼し、人に信頼されることに、「自分以外の他者が必要だ」という感覚は、いつの間にか刷り込まれた感覚です。本来、自分の生き方というのは、他者に左右されないものです。既にそこにあるものなのです。
同じように、他人が関係してしまう感覚が幾つかあります。例えば、「誰も私のことを必要としていない」「誰からも愛されない」「いつかきっと捨てられてしまう」という感覚は、他人が関係している感覚です。
本来、このような信頼などは、もともと自分の中にあるもの、他人は関係ないものなのです。自分を生きれない時、実はこのような他人を介した感覚が関わっていることが多いのです。
セッションでは何をするか?
まずは、瞑想の基本的な方法を説明します。感情の成り立ち等を説明していきます。この辺りは、認知行動療法で行われている説明をした方が、理解しやすいと思いますので、そのような説明をしていきます。
次に瞑想を実践してもらいます。マインドフルネスの基本は、日々、瞑想をしてもらうことにあります。瞑想は、習慣としてやってもらうほうが気づきが増えていきます。瞑想は、単に座って行う瞑想以外にも歩きながらの瞑想など様々な方法があります。様々な瞑想方法を知り、実践した方が気づきが増えると感じています。
同時に、セッションの中で、自分の不快な感情が起こった出来事・経験を話してもらいます。一つの経験に対しても、様々な気づきがあります。そして、様々な考え、感情、行動などが含まれているはずです。これらを、一つ一つ取り上げながら、自分の経験を理解していきます。これは、弁証法的行動療法では行動連鎖分析と呼ばれます。必要であれば、生活上の工夫も考えていきます。
また気づきを増やすためのワークも幾つかやっていきます。例えば、『自分と近いような悩みを持っている人の話をきいて、自分との違いを考える』、『不安に実際に囚われたふりをしてもらう』、『自信を持った自分がいたとしたら、どうとらえるかを考えてみる』など様々なワークをしていきます。