Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale (Y-BOCS)は、強迫性障害(強迫症)の臨床評価尺度としては、ゴールド・スタンダードなものになります。
強迫性障害の主要な症状は、ほぼ全て網羅されています。
強迫性障害の方は、強迫症状を複数持っている場合があります。そのため、一度は、このY-BOCSで強迫症状を整理することがとても大切になるのです。
※印のついた項目は強迫性障害以外の障害の症状の場合もあります。
【強迫観念】
攻撃的な強迫観念
- 自分を傷つけてしまうかもしれないと怖くなる。
例) ナイフやフォークを使うのが怖い。尖った物を使うのが怖い。窓ガラスの側を通るのが怖い。
- 他人を傷つけてしまうかもしれないと怖くなる。
例) 他人の食べ物に毒を入れるのではないか。赤ん坊に危害を加えてしまうのではないか。電車の前に誰かを突き落としてしまうのではないか。なんらかの災害が起こったとき当然するべき援助をしないことで責められるのではないかと思うと恐ろしい。間違ったアドバイスをして大変なことになるのではないか。
- 暴力的あるいは恐ろしい考えや場面などの想像が頭に浮かんで離れない。
例) 殺人を想像する。人の体を切り刻むのを想像する。その他むごたらしいことを想像してしまう。
- 卑猥な言葉や相手を侮辱するような言葉を口に出してしまうのではないかと怖くなる。
例) 公の場所で卑猥なことを叫んでしまわないだろうか。卑猥なことを書いてしまうのではないだろうか。
- 他にも何か当惑するようなことをしてしまうのではないかと怖くなる。
例) 皆の前で馬鹿かと思われるようなことをしてしまうのではないか。
- 意志とは反対の行動を突発的にしてしまうのではないかと怖くなる。
例) 車で木に突っ込んでしまうのではないか。誰かをひいてしまうのではないか。友人を刺し殺してしまうのではないか。
- 盗みを働いてしまうのではないかと怖くなる。
例) レジでごまかしてしまうのではないか。つまらないものを万引きしてしまうのではないか。
- 不注意で他人に危害を加えてしまうのではないかと怖くなる。
例) 気がつかないうちに事故を起こしてしまうのではないか。(たとえば車でひき逃げしてしまうのではないか)
- その他、自分の責任で何か恐ろしいことが起こるのではないかと怖くなる。
例) 出がけの用心が足りなくて、泥棒に入られたり、家事になったりしていないか。
汚染に関する強迫観念
- 体から出る老廃物や排泄物にいつも心配し嫌な思いをしている。
例) 人の集まるところで、エイズや癌やいろいろな病気がうつるのではないか。自分の唾や尿、便、精液、室分泌物に対して嫌悪を覚える。
- 汚れやばい菌を過剰なくらいに心配している。
例) いすに座ったり、握手したり、ドアのノブに触れたりしたときにばい菌がついたのではないか。
- 環境汚染について過剰なほどに心配している。
例) アスベストや放射性物質、有害廃棄物に汚染されたのではないか。
- 家庭用洗浄剤について過剰に気を使っている。
例) 台所や風呂場用の洗浄に毒性があるのではないか。溶媒や殺虫剤、テレビン油が心配だ。
- 動物を異常に嫌悪している。
例) 虫やイヌ、猫、その他の動物を汚くてさわれない。
- ネバネバしたものや残りカスが異常に気になる。
例) 粘着テープや粘ついた物には汚染物がこびりついているようで怖い。
- 汚染されたために病気になってしまうのではないかと怖れる
例) 汚染が直接の原因となって病気になってしまうのではないか。(どのくらいの時間がたてばその病気があらわれるかということは人によって様々に信じている。)
- 自分が他の人を汚染してしまうのではないかと心配している。
例) 他人に触れるのが恐ろしい。有害物(たとえば殺虫剤)にさわった手で、あるいは自分の体に触った後で人の食事の用意をしてしまうのではないか。
性的な強迫観念
- 道徳に反するか、または倒錯的な性的考え、想像、衝動にとらわれる。
例) 見知らぬ相手、家族、友人に対する望ましからぬ性的考えを抱く。
- 子どもや近親者に対する性的な考えにとらわれる。
例) 自分の子どもや人の子どもに対して性的ないたずらをするという望ましからぬ考えを抱く。
- 同性愛に関する強迫的な考えを抱く。
例) 何の根拠もないのに「私は同性愛ではないか」とか「とつぜんゲイになったらどうしよう」というような考えに悩まされる。
- 攻撃的な性的行為をしたいという考えにとらわれる。
例) 大人の見知らぬ人や友人、家族に暴力的な性行為を行うという望ましくない想像。
保存や節約に関する強迫観念
- たくさんのものをため込んだり節約しないと気がすまない
例) 見るからに無用のものでも将来必要になるかもしれないと思って捨てることができない。役に立たないと思って捨てることができない。役に立たないと分かっている物でも拾って集めておかないと気が済まない。
宗教的な強迫観念
- 神や仏、神社、仏壇など神聖なものを冒とくしてしまうのではないかと怖れる。
例) 冒とく的な考えを抱いたり、言ってしまったりして、罰せられるのではないかと心配になる。
- 善悪の判断や道徳的なことを過剰に気にしている。
例) 常に正しい行いをして、嘘をついたり人をだましたりしていないかと心配になる。
対称性や正確さを求める強迫観念
- 物を対称的にそろえたり、何でも正確でないと気が済まない。
例) 机の上の紙や本をまっすぐにそろえたり。計算や書字が正確かどうか気にする。
その他の強迫観念
- 何でも知って覚えておかないと気が済まない。
例) 車のナンバープレートの番号や、テレビドラマの俳優の名前、昔の電話番号、Tシャツや看板に書かれてあったことなど、あまり重要なことではないとわかっていても覚えておかなくては気が済まない。
- 言うべきでない言葉を口にだしてしまうのではないかと怖れてしまう。
例) 迷信とはわかっていてもある種の言葉(たとえば4や9, 13という数)を口に出してしまうのではないかと怖れる。死者を冒とくするようなことを言ってしまうのではないかと心配になる。
- ちゃんとしたことを話せていないのではないかと心配になる。
例) 間違ったことを言っていないか、適切な言葉を使っていないのではないかと心配になる。
- 物をなくしてしまうのではないかと心配になる。
例) 札入れ、あるいは新聞の切り抜きやメモ用紙のようなたいして重要ではない物でも、なくしてしまうのではないかと心配になる。
- 何らかの想像(暴力的ではないもの)が頭に浮かんで煩わしくなる。
例) 考えたくはないのに心に浮かんでくる種々雑多な想像。
- 意味のない音、言葉、音楽が頭に浮かんで煩わしくなる。
例) 言葉や音楽、歌が頭に浮かんで、止められない。
- ある種の音や雑音が異常に気になる ※
例) 時計のチクタクいう音や別の部屋の話し声が気になり、眠れないこともある。
- 私には、幸運な数と不吉な数がある。
例) ある数(たとえば4や9, 13)をみると、ある幸福な数の回数(たとえば7)だけの行動をとってしまう。あるいは幸運な数字の時間(たとえば7時)まで行動を延期しなければならない。
- ある色が自分にとって特別重要な意味を持っている。
例) ある色の物を使うのが怖い。(たとえば黒い物は死を表していたり、赤い物は血や怪我を意味している。)
- 私は極端に迷信深い
例) 墓地や霊柩車、黒猫の前を通るのが怖い、死に関した縁起を怖れる。
身体に関する強迫観念
- 病気や体の不調に関して過度に心配してしまう。
例) いくら医者から大丈夫と保証されても、癌や心臓病、エイズのような病気にかかっているのではないかという心配がとれない。
- 体の一部や外見に対して異常に心配している。
例) 容貌や耳、鼻、目やその他の体の一部がぞっとするほど醜いと思えて、どんなひとからそんなことはないと言われても納得できない。
【強迫行為】
清潔を保つための強迫行為
- 極端に長く、あるいは儀式的なやり方で手を洗う。
例) 汚いと思うものに触れたり、触れたのではないかと思うと、一日に何度も、あるいは長時間手を洗う。手だけではなく腕全体を洗うこともある。
- 過度に長く、あるいは儀式的にシャワーを浴びたり、入浴したり、歯を磨いたり、身繕いに時間をかけたり、トイレに時間がかかったりする。
例) シャワーや入浴、体洗いなどに数時間かかる。もし途中で邪魔が入ると、もう一度すべてやり直す。
- 家具や持ち物を執拗にきれいにしないと気が済まない。
例) 汚いと思うものを触らないようにしたり、できるだけ遠ざかろうとして様々な手段をとる。
- 汚いと思うものをさわらないようにしたり、できるだけ遠ざかろうとして様々な手段をとる。
例) 殺虫剤やゴミ、灯油入れ、生肉、工具、薬、ペットの寝床などを家族に頼んでどかしてもらったり動かしてもらう。もしこれらのものが避けられないとき、たとえば自分で灯油を入れなくてはならなくなったら、手袋をはめてしかポンプをもてない。
確認を行う強迫行為
- 人に危害を加えたのではないかと心配で確認してしまう。
例) きがつかないうちに誰かに怪我をさせていないか確認する。そんなことはない、大丈夫と誰かに言ってもらいたくて尋ねたり電話してしまうことがある。
- 自分自身を傷つけたのではないかと心配で確認する。
例) 尖ったものや危ないものを使った後に、怪我や出血がないか確認する。さらにはそれを確認してもらうために医者を訪れることがある。
- 恐ろしいことが起こらなかったかいつも確認する。
例) 自分が何か大変なことを起こしてしまったのではないかと、新聞をみたり、テレビやラジオのニュースを確かめる。何も起こっていないということを確かめる。何も起こっていないということを確かめるために周囲の人たちにたずねてまわることもある。
- 何らかの失敗をしなかったかいつも確認する。
例) 家を出るときには、戸締まりや、ストーブの消し忘れがないか、コンセントは大丈夫かと何度も確認してみる。失敗がないかどうか確かめるために、読み書きのときや、ちょっとした計算をするときも繰り返し確認する。
- 体の具合についての強迫観念のために、体の具合をあちこち確認する。 ※
例) 心臓病や癌にかかっていないかと心配で友人や医師に何度も大丈夫と言ってもらおうとする。脈拍や血圧、体温を何度も測ってみる。体のにおいを自分で確かめる。どこか醜いところがないかと鏡の前で自分の姿を確認する。
儀式的行為の繰り返し
- 何度も書き直したり、読み直したりしないといけない。
例) 何度も何度も同じところを読み返さねばならないので、数ページの本を読んだり、短い手紙を書くのに何時間もあかる。今読んだところが理解できなかったのではないかと心配になる。「完全な」言葉や言い方をしようとこだわる。本の中のある印刷された文字の形について何らかの強迫観念を抱く。
- 日常のなんでもない行動でも、繰り返して行いたくなる。
例) スイッチを切ったり、入れたりのような行為を繰り返す。髪を結ぶ。ドアを出たり入ったりする。ある方角をどうしても見てしまう。これらのことをある決まった回数だけしないと落ち着かない。
数える強迫行為
- なんでも数えないと気が済まない
例) 天井の板や床のタイル、本棚の本、壁の釘、さらには砂浜の砂粒でも数えようとする。洗うといった行為を繰り返して、それを数える。
整理整頓に関する強迫行為
- なんでもきちんと整理したり並べないと気が済まない。
例) 机の上の紙や鉛筆、本棚の本をまっすぐに並べる。家の中のものをきちんと整理するのに何時間も費やし、それが乱されたり邪魔されるといらいらする。
物をためたり集めたりする強迫行為
- 何でもためておいたり集めないと気が済まない。
例) もしも捨ててしまったらその後で必要になることがあるのではないかと不安になって、古新聞、ノート、空き缶、紙タオル、包装紙、空き瓶などをため込んでいる。道ばたやゴミ箱から役にたたないものを拾い上げる。
その他の強迫行為
- 心のなかで行う決まった儀式がある。(上記の確認行為や数える行為は除く)
例) 悪い考えを取り消すために善いことを考えたりお祈りをしたりするように、頭のなかで儀式を行う。これはあなたが不安を鎮めたり気持ちよくなるために意図して行う行為であり、強迫観念とは区別すること。
- 何らかのことを話したい、尋ねたい、告白したいという気持ちにとらわれる。
例) 他人に保証を求める。してもいない悪事を告白したい。気分を良くするためには、ある言葉を他の人たちに話さなくてはならないと思い込む。
- 何でも触ったり、トントンと叩いたり、さすってたりしてみたくなる。 ※
例) 木目のようなざらざらしたものをみるとさわらずにいられない。ストーブの上のような熱い物に触りたくなる。他の人がいるとどうしても触れてみたくなる。たとえば電話のようなものに触れれば家族が病気にならないと信じている。
- 自分や他人に恐ろしいことが起こったり危害がくわえられないように何らかの行為を行う。(確認行為以外の行為)
例) ナイフ、はさみ、壊れやすいグラスのような尖った物や壊れやすいものに近寄らないようにしている。
- 食事をするのに決まった儀式的なやり方をする。 ※
例) 食べ物やお皿、お箸を特別な決まった並べ方をしないと食べられない、厳格な儀式にしたがって食事をする。ぴったりある時間にならないと食事を始められない。
- 迷信にとらわれた行動をする。
例) バスや電車に不吉なナンバー(たとえば4,9)がついていると乗れなくなる。毎月4日(9日, 13日等不吉な数の日)は外出できない。葬式を出している家や墓地の前を通ったらその時の服は脱ぎ捨てる。
- 毛を抜く癖がある(抜毛症) ※
例) 指や毛抜で、頭髪、眉毛、まつげ、恥毛を抜く癖がある。カツラを付けなければならないようなハゲをつくってしまった。まつげや眉毛を抜いてつるつるにしてしまった。