EMDRの治療のイメージは、海底調査に例えると分かりやすいと思います。
海底調査に行くためには、大きな船が必要ですよね。
そこで、大きな船を最初に作ります。
これが安全な場所なのです。この船がしっかりしたものであれば、海に出ても怖くないです。
船が、沈みやすそうなものであると、海底調査に行く気も失せてしまいます。
なぜなら、海はとても怖いですよね。
さて、頑丈な船を手に入れて、海底調査をする場所まで来るとします。
ここまでで、セラピストとしては、どこを調査すればいいかの海図のようなものを作るのです。
海図がないと、道に迷ってしまいます。
沢山あるトラウマ記憶の中で、どの地点を調査すればよいかをアセスメントして、ポイントを決めるのですね。
いよいよ、海底調査です。
海底調査を行うためには、そのポイントから潜水服を身につけて海に飛び込む必要があります。
これが、いわゆる脱感作と呼ばれるパートに該当します。
海に飛び込むと危険だなと感じる場合は、懐中電灯やら、色々な装備を身につけますね。
EMDRでも脱感作が不安な場合は、様々な小道具を身につけてもらいます。
例えば、自分にとって役に立ってくれそうなパートや、勇気をくれる人物、場所など様々なアイテムがあります。
これらを身につけて海に飛び込むと心強いですね。
さて、海中に潜って行くと、時々は横穴を発見するかもしれません。
思わぬ所で、記憶と記憶が繋がっているようにです。
時々は、酸素を補充するために、船に戻ってくる必要もありますね。
EMDRでも、長く脱感作を行うと、堂々巡りがおこって、上手く処理がいかないことがあります。そのような時は、船に戻ってきて酸素を補充するように、リソース(資源)を補充するのです。
この船は頑丈な船であり、この船に戻って来れるという安心感や、戻ってくると助かるという安心感がトラウマ処理には必要なのですね。
また、新しい酸素(リソース)を補充すれば、潜っていくと良いです。
時には、海底が思ったよりも深い場合もあります。
深く潜って行くと、更に奥に潜っていく必要があるかもしれません。
EMDRは、過去への旅をするように治療を進めていきます。
深く潜れば潜るほど、普段とは違う景色に驚くかもしれません。
色々な発見があるかもしれません。
こんなトラウマがあったのかと驚くこともあるかもしれません。
トラウマは、海底に沈んでいる、忘れられた遺物のようなものです。
これらを船に引き上げて組み立てていくのですね。
トラウマ記憶は断片化されています。
その散らばったかけらを探しにいっているわけです。
もしかしたら、そのトラウマ記憶のかけらを組み合わせていると、当初と違う部分があるかもしれません。
想像していたものと違うかもしれません。
しかし、トラウマとはそういうものです。
むしろ、当初想像していたものと違う形をしている時、そこにトラウマが癒やされていくヒントが隠されていることが多いのです。
その為、海底から引き上げられた遺物は、丁寧に安全な船上で組み上げていく必要がありますね。
このパズルのピースが全部埋まり、一枚絵になったとき、トラウマは大分良くなったと言えるでしょう。
フラッシュバックがよくなったと思える徴候の一つに、トラウマ記憶の前後が思い出せるようになるというものがあります。
トラウマ記憶の時が動き出す と表現すると詩的かもしれませんね。
フラッシュバックの記憶は、ほんの数秒ですが、その前後に実は大事な記憶が埋まっている場合もあります。
さて、長くなってしまいましたが、PTSD・トラウマの治療のイメージはこのようなものです。
イメージがあると、とても治療の先がわかるので、安心感が持てます。