EMDR と PE療法

EMDR
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※ 以下のコラムを、PEの研修も受けた後に、まとめなおしました。

参考:PE療法(持続エキスポージャー療法)とEMDRの比較

 

PTSDに対する心理療法としては、この二つが双璧をなしている治療法だと考えられる。

PE療法は、刺激場面に対するエキスポージャー療法を長時間続けることによって、恐怖記憶に対する馴化(慣れ)が起ることによって治療を行う…という説明があった。確かにFoaのインタビュー記事では、PTSDに対するエキスポージャー療法も他の不安障害に対するエキスポージャー療法と変わらないと発言する場面もあった。
http://www.mentalhelp.net/poc/view_doc.php?type=doc&id=23195&cn=109
等参照(これも、いつか要約したいと思っている) このインタビューは2008

しかし、もともとのemotional processing theoryでは、実は記憶の再構成であると既に言っており、実際PE療法の実践も馴化よりも、記憶の再構成について言及することが多くなっている

以下、参考
https://sites.udel.edu/delawareproject/files/2012/10/Cat-3.1-ppt-5-Foa.pdf

◯Foa & kozak 1985 情動処理理論
・不安障害は、現在の病的不安(情動)の構造を反映している
・回復すると、病的な連結が訂正される。例えば、情動処理が起る
・回復のメカニズムは以下の通り
①病的構造を活性化される
②病的な連結に反している情報を顕在化させる
・情動処理が行われる指標は
①情動的エンゲージメント
②セッション間・内での馴化
③自分や正解に対する誤った認知の変化

◯トラウマ記憶
トラウマ記憶は、以下に代表されるものを含む恐怖の構造を持っている
①トラウマ後、トラウマ間における刺激の存在
②トラウマ後、トラウマ間における身体的・行動的反応
③刺激と反応の関連性に対する意味付け

刺激、反応、意味付けは現実的(機能的)であったり、非現実的(非機能的)であったりする。
例) 性被害にあったことから、『世界は、危険に満ちている』という判断をすること

PEには、解離という概念がない。PTSDを治療する際には、オーバーエンゲージメント、アンダーエンゲージメントと呼ばれる、トラウマ記憶にアクセスし過ぎているが、アクセスできていないかといった概念のみ存在する。
恐らく、そのPEの弱点を補ったものとして、現れたのがSkills Training in Affective and Interpersonal Regulation / Narrative Story-Telling (STAIR/NST) と言える。これは、PEの前段階としてDBT(弁証法的行動療法)を付け加えたものと言える。ただ、このプロトコルのRCTは開発者のMarylene Cloitreからしか出されていないようだ。これは、複雑性PTSDに対する治療プロトコルと考えて良い。

一方、EMDRは、適応的情報処理理論にもとづいている。EMDRでは、記憶の再構成というよりは、ポジティブな記憶と連結させることによって、ネガティブな記憶を適応的にさせるというニュアンスだと思う。

現象としては、PEもEMDRもほぼ同じような現象が起こっているように感じる。ただし、EMDRは解離に対するプロトコルがいち早く作られている点で、PEとは少し違った経過をたどっている。さらにEMDRは、解離性同一性障害にも適応がある点でPEよりも優れていると言える。EMDRは、催眠療法とは違うものの、催眠療法と併用することで、使い勝手が更に向上する。

両側性刺激(目の前で指をふる)は、記憶にアクセスするためのツールであり、EMDRの中核的な方法ではない。実は、両側性刺激を行う前の介入や、両側性刺激を行なっている最中の関わりが非常に重要になる。特に、複数回のトラウマや、幼少期のトラウマに対する治療では、これらが重要になる。

現在、PE療法、EMDR以外にも、対人関係療法、認知処理療法など、いくつかのエビデンスが出ている心理療法がある。どれが向くかは、治療者と非治療者の掛け算になるので、一概には言えないが、選択肢が増えるといいと思う。

参考:EMDRと、その作用原理とは? どんな人に効くのか?

参考:トラウマ・PTSDの治療で最初に必要なこと

 

 

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