周産期と強迫症

強迫症(強迫性障害)
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今回は周産期の強迫症(Perinatal OCD)について解説します。

周産期と強迫症

Blakey & Abramowitz(2017)によれば、妊娠中の強迫症の発症率は最大39%であり、出産後の強迫症の発症率は最大で30%になります。また、強迫症の患者の29%が出産後に症状が悪化することが報告されています。このように周産期における強迫症は非常に大きな問題になります。

周産期の強迫症の特徴

妊娠中の強迫症は発症が緩やかであり、産後の強迫症は発症が急速であると言われています。症状としては洗浄強迫、確認強迫など様々な症状が出現します。特に子供を綺麗にしたい、害を与えたくないという強迫観念が多いように思います。

また、周産期の強迫症では産後うつ病と症状の重症度が関係してきます。一方で、産後精神病とはあまり関連がないようです。 強迫症を持ち気持ちが落ち込みながらも強迫行為をしてしまうという悪循環があります。

周産期の強迫症の原因

セロトニン仮説では、妊娠・出産によるセロトニン・システムの調整困難が強迫症の発症の引き金になるのではないかと仮説を立てています。しかし、この仮説は、議論の余地があるようです。他にもオキシトシンと呼ばれるホルモンの影響ではないかとも言われています。

周産期の強迫症の治療

薬物療法としてのSSRI、認知行動療法が周産期の強迫症にも用いられます。ただし、周産期ということで、認知行動療法が好まれることが多いように感じます。周産期という特殊な事情はありますが、通常の強迫症への認知行動療法と同じ手法が用いられます。

治療を考える

まず、周産期に入る前にある程度、認知行動療法を進めておいた方がよいと感じます。強迫症はどうしても、幼少期から発症しており、なかなか認知行動療法等の治療法にたどり着いていない方もいらっしゃいます。

妊娠中は、妊娠の経過が安定していると認知行動療法を行うことができますが、あまり積極的な曝露などは避けたい所です。そのため、妊娠前にある程度の状態にまで強迫症を治療していることが望ましいように感じます。

出産後であると、しばらくは子育てとの両立になってきます。初産だと子育てそのものに様々な不安が伴い状況はなかなか大変です。ワンオペ育児状態など、一人で子供と向き合っていると心細いということもあります。さらに、この不安をあおってしまうような情報もいくつか出てきてしまいます。そのため、このような情報に対する対応も必要になってきます。

まず、子供さんのおしりふき用にウェット・ティッシュが大量に購入されるという状況が起こってしまいます。そのため、汚れたら掃除というサイクルが速く起こりがちになります。アルコール・スプレーなどの除菌グッズを使っている例もよくあります。

子供さんが動き出すと、よく物を口に入れる、汚れているものに触るなどの行為が出てくるため、子供の行動を制限してしまうということがよく起こります。子供が歩きだしてからも、なかなか外出ができない状態が続きます。

確認強迫では、子供に危害を加えないか心配していることもよく見られます。特に病原菌などの感染などから守ろうとして、洗浄・確認をしていることがあります。

そして、精神科受診・カウンセリング等の外出が非常に困難になってしまうという問題も起こってきます。子供を連れていかなければならなないので、落ち着いて治療が受けられないのです。

細かな治療の問題はありますが、子供はよく泣きますし、落ちているものを拾って口に入れますし、おもちゃをよだれでベトベトにしたり、ゴミ箱をひっくり返したり、おむつをしていてもおもらしをします。しかし、それでも成長していくものです。

できるところから、少し気を抜いて、子育てをしながら認知行動療法をやっていくことが大切だと日々思います。

参考文献

  • Blakey & Abramowitz 2017 Postpartum Obsessive‐Compulsive Disorder The Wiley Handbook of Obsessive Compulsive Disorders, Volume I, First Edition.
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