正確性の強迫は、強迫性障害のサブタイプの一つです。正確性の強迫の場合、強迫行為は確認ですが、いわゆるチェックをする確認強迫とは少し違います。大きな違いは、チェックをする確認強迫は、「確認しないと、嫌なことが起こりそう」と思って確認するのに対し、正確性の強迫の場合は、何か腑に落ちない、納得しないという感覚を消すために強迫行為を行います。また、チェックをする確認強迫の人は強迫行為をやめたいと思う人が多いのですが、正確性の強迫の人はしばしば、強迫行為をやめたいとは思わない方もいます。
正確性の強迫行為で多いのは、『文章を読んでいる際に、何度も同じ部分を読み直す』『自分が書いたものを何度も消して書き直す』『特定の動作・行動を他者に要求し、本人の言うとおりでなければやりなおさせる』『自分が正確に認識できなかった内容を、正しく把握しようと聞き返す』などです。
いずれも、強迫行為なので、『読みなおす』『書きなおす』『やりなおさせる』『聞き返す』等をしても、正確にできたという実感に乏しく、何度も強迫行為を繰り返してしまいます。時に、『やりなおさせる』『聞き返す』は、気を抜くとすぐに巻き込まれてしまうので注意が必要です。
強迫性障害の暴露儀式妨害法では、自分の嫌な感じを掴めていたほうが治療がうまくいきます。正確性の強迫の場合は、「正確になっていない感じ」に暴露していき、『読みなおす』『書きなおす』『やりなおさせる』『聞き返す』を反応妨害する必要があります。
特に正確性の強迫は、かなり無意識に強迫行為を行なってしまっているため、強迫行為を意識的に妨害しなければ失敗します。
『読みなおす』:いらない小説を読みながら、読んだ場所を黒いマーカーで潰して読み直しできないようにしたり、わざと1行飛ばしに読んでいく、1ページにかける時間を30秒くらいにして次のページに行くなどの方法がよく用いられます。
『書きなおす』:次々と、治療者がいう言葉を書き取らせる。終わった側から、シュレッダーに捨てて書きなおさせない。消しゴムも渡さない。
『やりなおしを強要する』:心理教育を行う。少しづつ、違う動作を加える、ほんの少しだけ違う動作で、本人へ対応する。
『聞き返し』:心理教育を行う。わざと矛盾する指示や、曖昧な指示を出す。また、治療者の指示を破るように指示する。指示に従わなかったこと、間違っていることを指摘するが、正しい内容を教えない。
また、正確性の強迫は、生活全般にわたっているため、他のもっと行いやすい場面での暴露儀式妨害法を行えば、自然とよくなる場合もあります。