発達性トラウマ障害とDESNOS

PTSD トラウマ
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PTSDの研究が進むうちに、PTSDのフラッシュバックに代表される侵入症状以外の症状にも注目されるようになりました。Herman(1992)の複雑性PTSD(Complex PTSD)や、Van der Kolk(2005)のDESNOS(Disorder of Extreme Stress not otherwise specified)などの流れを受け、近年は、発達性トラウマ障害(Developmental trauma disorder)という言葉が注目を浴びるようになってきました。発達性トラウマ障害とは、幼少期の慢性的なトラウマによって生じる精神疾患です(Van der Kolk, 2005)。

DESNOS(Disorder of Extreme Stress not otherwise specified)

Van der Kolk(2005)のDESNOSの症状は下記でした。(私訳です)

  • A. 感情と衝動の変化
    • 感情調整
    • 怒りの調整
    • 自己破壊的
    • 自殺念慮
    • 性的行為の調整困難
    • 過度にリスクを引き受ける
  • B. 注意と意識の変容
    • 健忘
    • 一過性の解離エピソードと離人
  • C. 身体化
    • 消化器症状
    • 慢性疼痛
    • 心配症状
    • 転換性症状
    • 性的症状
  • D. 自己認知の変容
    • 無力感
    • 欠損した感覚
    • 罪と罪悪感
    • 誰にも分かってもらえない
    • 自分はたいしたことない
  • E. 加害者に対する認知の変化
    • 歪んだ価値観を持つ
    • 加害者を理想化する
    • 加害者への復讐にとらわれる
  • F. 他者との関係の変化
    • 人を信じることができない
    • 再被害
    • 他人を迫害する
  • G. 意味体系の変化
    • 失望と絶望
    • 以前に持っていた価値観を失う

発達性トラウマ障害

しかし、the National Child Traumatic Stress Network (NCTSN) が、複雑なトラウマに対する診断基準として生み出した発達性トラウマ障害になると症状は下記になりました(Van der Kolk, 2005 )。

  • A.トラウマへの曝露
    • 発達上の有害な対人的外傷(例:放棄、裏切り、身体的暴行、性的暴行、身体的完全性(インテグリティ)に対する脅迫、強制的行為、精神的虐待、暴力の目撃、および死亡)に複数曝露される、または慢性に曝露される
    • 主観的な経験(例:怒り、裏切り、恐怖、あきらめ、敗北感、恥)
  • B. トラウマを想起する刺激によって繰り返し、特定の調整困難症状が出現する。その変化は恒常的であり、元の状態には戻らない。つまり、意識的に減らそうと思っても減らせない。
    • 情動
    • 身体(例:生理学的、運動的、医学的)
    • 行動(例、再演、リストカット)
    • 認知(例:もう一度起こると考える、混乱、解離、離人)
    • 対人関係(例:距離が近すぎる、気持ちとは反対の行動に出る、人を信じられない、人の言いなりになる)
    • 自己帰属(例:自己嫌悪、自責感)
  • C. 恒常的に帰属や期待が変化する
    • 悲観的な自己帰属
    • 保護者への不信感
    • 他人から助けてもらう期待を喪失
    • 守ってくれる社会的機関への信頼を喪失
    • 社会的正義・懲罰に対して頼らない
    • 将来、犠牲になることを避けられない
  • D. 機能的障害
    • 教育的に
    • 家族的に
    • 友人と
    • 法律的に
    • 職業的に

DESNOSと発達性トラウマ障害の違いは?

DESNOSと発達性トラウマ障害は非常に似ていますが、相違点としては、下記のことがあります。

発達性トラウマ障害で見いだされた調整困難は、行動面、対人面の問題がある。これらは、成人よりも小児期に多い特徴である(例えば、反抗的な行動、過度な依存的行動)。意味体系の変化(例えば、霊的な信念の喪失)は、DESNOSでは記述されたが、発達性トラウマ障害では記述されなかった。なぜなら、このような経験的な変化は小児期では証拠が少ないのである。発達性トラウマ障害、DESNOSは共に複雑なトラウマによる後遺症を一つの疾患単位としてまとめることに役立っている。

Treating Complex Traumatic Stress Disorders

つまり、現時点では、発達性トラウマ障害は小児期、DESNOSは成人期の特徴を反映していると言えます。

参考文献

  • Herman J.L. 1992 Trauma and recovery. New York, Basic Books.(中井久夫訳(1996):心的外傷と回復)
  • Bessel A. van der Kolk, Susan Roth, David Pelcovitz, Susanne Sunday, and Joseph Spinazzola 2005 Disorders of Extreme Stress: The Empirical Foundation of a Complex Adaptation to Trauma. Journal of Traumatic Stress, Vol. 18, No. 5, pp. 389–399
  • Bessel A. van der Kolk 2005 Developmental Toward a rational diagnosis for children with complex trauma histories. PSYCHIATRIC ANNALS 35:5
  • Julian D. Ford. Christine A. 2009 Courtois Defining and Understanding Complex Trauma and Complex Traumatic. Treating Complex Traumatic Stress Disorders
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