パニック障害(症)の治療の基本は、SSRIと認知行動療法になる。
まずは、治療の目標として、パニック発作を100%消失させることを目標とする。SSRIは、パキシルを使うことが多い。
多くの患者さんは、SSRIだけで治療が完結する。パニック発作が消失すると、自ら電車・バス等に乗れるようになってくるためである。
しかし、認知行動療法を併用したほうが再発のリスクが5割から3割に減ることが知られている。
パニック発作が消失しない人でも、認知行動療法を行えば、日常に支障がないレベルまで改善することが多い。
①発作が起こらないようにする
SSRIは、必須だ。薬は、血中濃度を一定に保つために、なるべく同じ時間に飲む必要がある。
また、カフェインや、疲労時に筋肉に溜まる乳酸がパニック発作を誘発することが知られている。そのため、コーヒーをさけて、できるだけ有酸素運動をおこない、疲れにくい体作りを行う必要がある。
また、酒、タバコ等も避けたほうが良い。
②発作時の対処法を身につける
発作が起こってしまったときは、初期には抗不安薬の頓服を飲むように言われる。抗不安薬は、一時的には必要であるが、なるべく発作時の対処方法を増やして、減らしていくことが必要だ。
呼吸法、リラクセーション法等がいいと思われる。最近は、マインドフルネスを実践することも多い。
③広場恐怖、予期不安に対処する
広場恐怖に対しては、現実場面エクスポージャー、予期不安に関しては、心配エクスポージャー等を行う。また、パニック症の方は、自分の内部感覚に対して敏感で、不安になりやすい。
そのため、内部感覚を誘発させる内部感覚エクスポージャーを行うようにもする。
パニック症の一つの治療のゴールは、パニック発作が起こっても慌てずに、冷静に自分の心の状態を観察でき、パニック発作の症状が過ぎ去るのを待てること、予期不安・広場恐怖がでてきても、その場所に行くことができるという所だ。
さて、パニック障害の方には残遺症状と呼ばれるものがある。
残遺症状とは、貝谷久宣先生によれば、
・頭痛
・血圧が上がり頭が膨れる感じ
・頭に何かが乗っている
・頭に血が上り、首や顔、特に眼が浮いてくる
・視野がチカチカと揺れる
・脈が飛ぶ
・動悸がする
・身体全体にドクンドクンと脈をうつ
・息苦しくなる
・胸が痛くなる
・胸がチクチクする
・喉元がビクビクする
・喉が詰まった感じ
・肩凝り
・首の痛み
・手が冷たい
・じっとりと汗をかく
・汗がひかない
・熱感がある
・体がゾクゾクして鳥肌が立つ
・背中がピクンピクンする
・気が遠くなりそう
・感情が湧かない
・自分の周囲の感じがピ-ンとこない
・雲の中にいるようだ
・フッ-と現実感がなくなる
・自分だけとり残された感じ
・胸騒ぎがする
・そわそわしている
・神経がビリッとする
・電車が脱線する恐怖に襲われる
・仕事の最中周囲の壁が自分に向かってくる
・普通のスピ-ド感が自分にとっては恐怖
などの症状が残ってしまうことを言う。これらの症状に対しても、パニック症としての治療を十分に行う必要がある。
また、パニック症の方はうつ病を合併しやすい。
パニック症のうつ病は、非定型うつ病の形を取りやすいことが知られている。
・よいことがあれば気分がよくなるが、悪い出来事に対して極端に落ち込む
・過眠
・過食
・体が鉛のように重くなる
・他人の言葉に傷つきやすい
などの特徴を持っている。
パニック症の後遺症として、これらの症状が残存している場合は、
パニック症の人が陥りやすい心性について説明した上で、うつ病の認知行動療法を追加で行う必要がある。