トラウマ・PTSDのケアで、一番最初に必要なものは「安全な場所」という感覚です。
安全な場所が上手に作れないと、トラウマの治療は上手くいきません。
そもそも、PTSD等は不安の病気です。不安の機能は、注意のネットワークを活性化し、外的に敏感に反応して逃げることにあります。
自然界で生きていくうさぎが、物音がした際に、耳を立てて、周囲を見渡しますよね。そういう時は、不安で、周囲に注意を向けている状態です。これが不安の機能なのです。
例えば、戦時下にPTSDになったとして、安心感があれば、この人は、別の戦闘で命を落としてしまうかもしれません。不安とは、危険な場所で生き残るためには、必要な感情なのです。
しかし、トラウマ・PTSDになった人は、脅威が去っても、この不安のスイッチが切れない状態になってしまいます。これは、強い脅威が来たために、常に不安になっている必要があるだろうと体が判断しているとも言えます。
リラクセーションという方法があります。トラウマ・PTSDのケアでは、確かにリラクセーションという方法も必要です。リラクセーションは主に体に働きかける方法です。
不思議なことに、トラウマ記憶は体の記憶としても残っています。
EMDRをしていると、体の記憶が蘇ってくることがあります。これは、脳が押さえつけていた記憶が表面化しているともとれます。
リラクセーションは、体の反応を沈めるためには有効ですが、これではまだ足りません。
EMDRでは、安全な場所という技法を用います。
「安全な場所」というのは、自分にとって心が平穏に暮らせるような場所のことです。
このイメージをしっかり作れるかどうかが、EMDRの治療を左右してしまいます。
また、必要であれば、この安全な場所に対して付加的なイメージを付与して、安全な場所を拡大していく必要があります。