自閉スペクトラム症のコミュニケーション(雑談)・トレーニング

自閉スペクトラム症
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コミュニケーションのタイプ

コミュニケーションを大きく分けると2つのタイプに分けることができます。

①目的があるコミュニケーション

②目的がないコミュニケーション(もしくは、感情の共有が目的のコミュニケーション)

①については、従来から、ソーシャル・スキルス・トレーニングとよばれるトレーニングが発展してきました。そこでは、頼む、断わる、依頼するなどのスキルを練習していきます。ソーシャル・スキルス・トレーニングで練習するスキルは、日常生活の中では必要不可欠なスキルばかりです。

一方、自閉スペクトラム症の方は、①のスキルは持っているが、②のスキルを持っていない方が多いのです。例えば、電話をかけたり仕事を依頼することはできるけれども、休憩時間に同僚と何を話していいか分からないため、会話がないという方もいます。

②は、会話において特定の目的がありません。最近の出来事やニュースなどを話す場合がこの②のタイプになります。そして、②は感情を共有していくという目的も持っています。例えば、ニュースを見た時の感想などを共有したりするからです。これは、一般的には雑談とよばれます。

なぜ雑談が必要なのか?

自閉スペクトラム症の方の中には、「なぜ雑談をしなければならないのか?」と思っている方が多いです。雑談に価値が見いだせないために、雑談をするのが嫌いだと思っている方もいます。雑談が大切な一つの理由は、感情を共有していると、自分の要求が通りやすくなるためです。雑談が多いと仲良くなることができます。そうすれば、自分の要求が通る可能性が高いのです。

また、雑談は議論とは違います。議論は、情報を共有することや、相手を論破していくことが目的になってきます。しかし、雑談はお互いに楽しむ・感情を共有することが目的となります。

雑談を分析する際の用語

雑談の中では、必ず話をする「話し手」と、話を聞く「聞き手」がいます。そして、話し手と聞き手が入れ替わることを「ターン」と呼びます。

例えば、インタビューでは、話し手と聞き手が入れ替わることが少ないですね。これは、インタビューをうける人がほとんど喋っており、インタビューをする人が質問をする場合などでないと話さないためです。

ターンには、このように”長さ”やがあります。ターンが長いと一方的な会話になりやすく、ターンが短いとお互いがしゃべりあう・聞きあうコミュニケーションになりやすいです。

話題は、どんな内容について話しているかということです。雑談を分析する中では、どこからがどの話題についての話なのかは明確に割り切れないこともあります。

ターンが生じるとき

ターンは、様々な要素で生じます。最も分かりやすいのは、「質問」です。雑談の中で、聞き手が、質問をすれば、話し手と聞き手が入れ替わります。

また、「相手の話に対してコメントする」ことでも、ターンは生じます。聞き手が相手の話をうけて、自分の感想や考えを言う場合などです。

どこでASD(自閉スペクトラム症)の人は、困難があるのか?

私のスキル・トレーニングで分類している困難さは以下のようになります。

○話す

  • 長すぎる話・専門的な話題 : これは単にターンが長い場合もあります。息継ぎがなく、会話に「間」がない場合に起こりがちです。また、専門的な内容だと、相手がついてこれずに、話し手と聞き手が入れ替わらないことが生じやすくなります。
  • 共感するポイントがない話をする : 話題の選択において、相手が共感しないであろう話題を選んでしまったり、専門的な話題においても、相手が共感できるような内容を含めていない場合があります。

◯聞く

  • 話し手の話に反応がない : 聞き手になった際に、相槌がないことがあります。話をきいているけれども、「うん」「そうなんだ」「へぇ」と言った反応が見られない場合です。
  • 相手の気持ちに触れない質問をする : 雑談は、感情の共有が目的の会話です。情報の共有よりも感情の共有が優先されます。そして、情報の共有ばかりが優先されると、雑談が盛り上がらなくなってしまいます。質問をする際に、相手の喜怒哀楽にふれない情報についての質問ばかりをしてしまう場合があります。

◯話題を作る

  • 一般的でない話題、専門的な話題を提供する : 雑談を続けていくためには、誰かが話題を提供しなければいけません。その際に、全員が話しやすい話題を提供するほど、場が盛り上がります。その際に、全員が話しにくい話題を提供する場合があります。
  • 言葉遊びによる連想など、個人的な話題の展開 : 話題が変わっていく場合でも、前の話題は次の話題に何らかの影響を及ぼしています。話題同士は、あまり意味的な関連性がないのが通常なのですが、言葉遊び等の連想によって、雑談をしている他の人が内容についていけない場合があります。
  • 話題が転換しているにも関わらず、すぐ後に以前の話題で明確になっていない点を明らかにしようとする : これは、こだわりの影響からきていると思いますが、自閉スペクトラム症の方の中には、この行動があるために、会話が止まってしまう方がいます。

どのようなスキルを目標とするのか?

私のトレーニングでは、以下のスキルを身につけることを目標にしています。

◯話すスキル

  • 経験談を話す : 経験談を話すと、専門的な話題よりも共感されやすくなります
  • 相手の話にコメントをする : 相手の話について、自分の感想を述べると、話が発展しやすくなります
  • 素朴な感情・考えを含める : ◯◯に行って楽しかった。 ◯◯がとてもイライラしたなどの感情・考えは、共感しやすく、雑談が盛り上がるきっかけになりやすいです
  • 適度な間がある : 話し手と聞き手が入れ替わるターンが出現するためには、話ている最中に「適度な間」が必要になります。

◯聞くスキル

  • 情報を詳細に尋ねる : 相手が話してくれた経験や情報などについて、より詳しい内容を尋ねます
  • 話し手の素朴な感情を明確化する : 「それは嬉しいんじゃないですか?」「楽しかったですね」などの相手の喜怒哀楽について、その内容を明確にすると、感情が共有しやすくなります。
  • 素朴な気持ちに対してコメントする : 雑談が盛り上がるためには、相手の気持ちに対して自分がどんな意見・気持ちを持っているかを話す必要があります。

◯話題を作るスキル

  • 最近のニュースなど話題を作る : 話題を作る際に、ニュースなどを参考に話題を作ります
  • 話題を連想して、新たな話題を作る  : 前の話題から連想して元に新しい話題を連想をします。例えば、「さっき、夏休みって話だったけど、大学って後期はいつからだっけ?」
  • 質問をして、新たな話題を作る : 誰かに質問をすることで新しい話題を生み出すこともあります。
  • 共通点をみつける : 共通点が多く見つかるほど、雑談がしやすくなります。その為、知らない人と会話を始める場合は、共通点を多く見つける必要があります。
  • 話の最後に、話が広がる事柄を含める : 雑談を始めたばかりでは、お互いに知っている情報がすくなく、雑談が盛り上がらない場合があります。その際には、話の最後に、話が広がる(相手が質問しやすい・コメントしやすい)内容を含めるとよい場合があります。

◯全体の評価

  • 会話量が聞く・話すで同じか、聞く方が多い : これは、自閉スペクトラム症の方は一方的に話しすぎることがあるためです。一方、共感や相槌がなくきいている場合も雑談が盛り上がりません。また、話を聞く方の時間が長くても、コミュニケーションとしては変にはなりません。

どのように練習していくのか?

実際に、時間を決めてロールプレイをしていきます。セラピストと一対一から行えます。理想は3人以上です。というのも、2名で行うと、集団での雑談の練習にはならないからです。時間は10分程度です。4人いれば、4人目が観察者となり、どのような行動が雑談を促進させたかを観察してもらいます。

会話が終了すると、どんな点が良かったのか、話題の変遷などについて振り返り、各場面でどのようにすればよかったかを振り返ります。必要に応じて、ビデオでの評価も行います。ビデオで評価すると、練習前と練習後の変化がとても良くわかります。

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